みずがめ座
新たな季節へ向かって
初夏の緑に吹く風は
今週のみずがめ座は、「春尽きて山みな甲斐に走りけり」(前田普羅)という句のごとし。あるいは、甘やかな感傷や小賢しい技巧を払いのけ、自らの足で突き抜けていくような星回り。
晩春の頃合いには、古来よりたくさんの先人が「春を惜しむ」句を作ってきた大変感傷的な季節ですが、それは何かよき時代が終わってしまうことを嫌う本能と言ってもいいでしょう。
しかし掲句には、まるでもうすぐ終わってしまう春へのアンニュイな感情などどこかに置き去りにしていくかのように、むしろ初夏へ向かって一気に走りぬけていくかのような疾走感があります。
「甲斐」は山深き内陸の地ですから、きっと溢れるような青葉若葉を引き連れて、爽やかに吹きぬける風にでもならんとしたのかもしれません。
今週のあなたもまた、そんな季節の勢いに乗って、いま携わっている付き合いや試みを、ひとつの到達点の向こう側まで運んでいくことがテーマとなっていくでしょう。
ただただ自分のために
ニーチェの『喜ばしき知恵』の「上に向かって」という断章は、まさに今週のあなたにはうってつけかも知れません。
「山に登るのに最善のやり方は何か?
ひたすら上って、登ることすら考えないこと!」
終わりつつある時代を通じて自分は誰かの役に立てただろうか、などと問い始めた時点から、人は「登ることを考えて」しまっているのでしょう。
自己満足で大いに結構。慌てず騒がず、新たな季節の風をひたすら自分に与えればいい。
言いたいことを言えばいい。人が聞いたら不名誉だとそしられかねない考えも、むしろ初めに表明してしまえ。そこで去る者は去る。代わりに、あなたはますますあなたらしくなっていく。真に恐れるべきは、ついに一歩も登りもせずに終わってしまうこと。
今週は迷いなど置き去りにしていくつもりで、走り抜けていきましょう。
今週のキーワード
青葉若葉