みずがめ座
自然な一致への回帰
二匹の狼
今週のみずがめ座は、「狼の声そろふなり雪のくれ」(内藤丈草)という句のごとし。あるいは、自意識をほどいていった先で、誰かとの自然な一致を体験していくような星回り。
呼吸というのは合わせようと意識すればするほど、余計に合わなくなっていくものです。なぜなら呼吸というものは、ほんらい頭を通じて体を動かすためにではなく、体を通じて頭を動かすためにあるものだから。
当然、体が鈍感になって一向に研ぎ澄まされることがなくなれば、誰かと息が合う瞬間も減っていくのが自然というものでしょう。逆に言えば、自然の息が合ってしまった誰かがいるのなら、それはあなたの体が鋭敏になってきている何よりの証しです。
狼は他の動物とは明らかに一線を画す存在で、古来より狼に対しての対応は、人対動物というよりも、人対人に近いものでした。今週のあなたは、月のよく出る晩、おのれの本能に従いつつも誰かと息の合う瞬間をじっと待ち臨んでいくことになるはず。
そんな晩に限っては、ややこしい人間の頭など、どこかに置いてきてしまいましょう。
銀河の呼吸
出会いが運命をつくるのならば、運命は呼吸する体の在り様によって左右されるものだとも言えますが、フランシス・ベーコンは『エッセー』の中で、「運命」について次のように書いています。
「運命の歩みは、空の銀河に似ている。銀河は多くの小さな星の集まりあるいは塊である。小さな星は散在していてよく見えないが、一緒になって光っている。同様に、多くの小さな、見えにくい徳性が集まって人々を仕合わせにするのである。」
個人に価値を与えてその価値を比べてみたり、勝ち負けを気にしている小さな人間の頭脳に、思わずよーく言って聞かせたくなる言葉ですね。狼がかならず群れをつくって行動していることを考えると、狼は人間以上にベーコンが言わんとしていることを分かっているのかもしれません。
文明化が行き過ぎてすっかり体を鈍らせてしまった我々人間ですが、どうか少しでも、狼に近づいていけるといいのですが…。
今週のキーワード
フランシス・ベーコン『エッセー』