みずがめ座
生きた時間を取り戻す
つつましさの美学
今週のみずがめ座は、「美しく木の芽の如くつつましく」(京極杞陽)という句のごとし。あるいは、自分なりの理想像を簡潔に表現していくためのきっかけを掴んでいくような星回り。
春に萌え出る木の新芽を「つつましく」と表現する作者の感性はじつに初々しく感じられます。ひるがえって今のあなたには、そうした感性の初々しさをどこまで取り戻すことができるかが問われているように思います。
私たちは生きるということを、何かしらの経験や価値が増えているという前提で考えてしまう落とし穴にハマりがちですが、実際には、みな平等に残りの生き時間が引かれているだけ。
そういう自覚が深まっていくなかで初めて、慎ましさというものは人間の佇まいに表われてくるのではないでしょうか。
今週は自分の手柄や美点を飾り立てるのではなく、こうありたいと思える自分なりの理想像へそっと手を伸ばしていくような率直さを、引き出していきたいところです。
マイスター・ホラ(時間)の助言
ミヒャエル・エンデの『モモ』の中で、マイスター・ホラという物語のカギを握る人物が主人公のモモにこんなことを言っています。
「彼らは人間の時間を盗んで生きている。しかしこの時間は、ほんとうの持ち主から切り離されると、文字通り死んでしまうのだ。人間というものは、ひとりひとりがそれぞれ自分の時間を持っている。そしてこの時間は、本当に自分のものである間だけ、生きた時間でいられるのだよ」
ここで言う「彼ら」とは「灰色の男たち」のことで、それは実体経済から離れた資本主義やお金を増やすことを目的としたシステムの一部となった人々のメタファーとも捉えられます。
いわば、木の芽の「つつましさ」の正反対にある人間の姿です。
現代に生きる私たちは、多かれ少なかれ自分の一部を「灰色」にしながら生きています。
ですがそれは、例えばお金や世間体のために働き、自分の楽しみを後回しにするうちに、「生きた時間」を失うことで加速化していっているのだと言えます。
今週はモモにならって「生きた時間」を取り戻すこと、そしてその中で咲いていく自分なりの花の美しさを感じとることにトライしていきましょう。
今週のキーワード
木の芽のように生きていく