
みずがめ座
奇妙なる沈黙

通電的変化
今週のみずがめ座は、「いなびかり鼻から鼻へ走りけり」(五島高資)という句のごとし。あるいは、誰か何かと交錯した刹那、ある種の情動の稲妻に貫かれていくような星回り。
この句はまず視覚的には、一瞬の閃光が空を裂くようにして出現してくるさまと、鼻と鼻、つまり2人の人間の鼻先がくっつくくらい接近している状態にある様子が同時に浮かんできます。
「いなびかり」は通常秋の季語ですが、今回はご容赦ください。「雷」とはちがい、あくまで光だけの現象であるそれは、まるで世界がその一瞬だけ別の位相にズレたかのような、異界的な亀裂と言えます。そんな稲光が2人のあいだを横切った(ように見えた/感じた)というのです。
つまりこれは、恋人どうしの親密な距離、ないし何かしら動物的な直感による接触の瞬間に、強烈な閃光のような感情や衝撃が走ったという、身体的な共鳴の比喩とも解釈できるのではないでしょうか。
それは恋と憎しみ、匂いと記憶、怒りと欲望、気付きと別れなどを誘発する言葉にならない感情の瞬時の通電であり、理性を超えたところで起こる説明不可能な事態とも言えます。
7月7日にみずがめ座から数えて「主観的情動」を意味する5番目のふたご座に「唐突な変化」をもたらす天王星が移っていく今週のあなたもまた、一瞬にして起こる感情の火花や、別れの兆しが走り抜けていくことになるかも知れません。
日常と演技と亀裂
何かと汗をかいて懸命に生きていると、住宅ローンを抱えるサラリーマンであれ、働きながら家庭を支える母親であれ、自由だけれどさみしい独身中年であれ、演じている役柄に熱心に打ち込めば打ち込むほどに、「本当の自分は何者なのか?」といった問いは、どんどん忘れ去られていくものです。
というより、そうした「忘却」の川の水を飲むことこそが、この世にうまく適応し、ほどほどに満足しながら生きていく上での大前提となっているのだと言えます。
しかし私たちには時おり、役柄上の自分は本当の自分自身ではないのだということを、ふと感じてしまう瞬間が訪れることがあるのではないでしょうか。
一度それが出てきてしまうと、目の前で展開されていく現実劇や演技においてNGを出したり、これまでスムーズに乗れていた脚本に乗れなくなったり、慣れ親しんだ日常舞台が、とたんに嘘っぽく、居心地の悪いものになっていくはず。
例えば、テレビ番組の中の演者が時おり奇妙な沈黙をともなって立ち尽くし、放送事故として処理されるときのように(芸人の板尾創路がある生放送番組のラストで沈黙してしまった事件はつとに有名だろう)。
同様に、今週のみずがめ座もまた、ふとしたきっかけから亀裂が入り、そこからニョッキリと顔を出してくる違和感や不安が無視できなくなっていくかも知れません。
みずがめ座の今週のキーワード
「本当の自分は何者なのか?」





