
みずがめ座
沈黙を守るすべ

重く沈みこむよう場面にて
今週のみずがめ座は、『珈琲来れど君コート脱ごうとせず』(榮猿丸)という句のごとし。あるいは、無駄なおしゃべりを極力そぎ落としていこうとするような星回り。
思わず心臓がキュッとするような緊張感が走る一句。喫茶店に話があると言われ呼び出されたのだろうか。注文した珈琲が来たけれど、コートを脱ごうともせず、下を向いて黙り込む「君」。
勘のいい人なら、この時点で「あ、これは別れ話でも切り出されるかな」と直感せざるを得ないはず。沈黙が重苦しく場を支配するなかで、不意に高まる鼓動ともつれる思考回路とを反映するかのように、掲句は五/七/五の定型のリズムから外れた、一音欠けた「字足らず」となっている。
そのため、一気に読み下した後にも何かが足らない気がして、どこか落ち着かないのだ。そしてそこまで来たとき、読者は作者の陥った場面と心情に、知らず知らずのうちに引きずり込まれ、同期させられたことに気付く。
あなたなら、こんな時どうするだろうか?もっとも多い失敗例としては、頭が真っ白になって、混乱しながらあたりさわりのない言葉を発し、そのまましゃべりたくて話しているのではない話を無駄に続けてしまう、といったパターンだろう。
もちろん、黙りつづけていても、それはそれでますます悪い想像がふくらんで怖い。こんな時は、まずできるだけゆっくり「心の中で十数えてみる」ことをおススメする。
成人の集中力持続時間は平均8秒とも言われ、実際テレビのCMが15秒で作られていることを考えると、相手が何を考えているのであれ、掲句のような場が重く沈みこむように感じられる時間が10秒以上続くことは滅多にない。逆に言えば、気まずい沈黙というのは10秒我慢すれば、相手が終わらせてくれることの方がほとんどなのだ。
4月18日にみずがめ座から数えて「駆け引き」を意味する7番目のしし座へと火星が移っていく今週のあなたもまた、ここぞというタイミングで沈黙を守ることを心がけてみるといいだろう。
心に「コの字」型カウンターを
喫茶店から大衆酒場に話を移そう。一口に大衆酒場と言っても、カウンターにはさまざまなタイプがあり、最もありふれているのは一本のまっすぐなカウンターでしょうし、ほかに「L字型」もあれば、四角系や長方形のものもある。
日本の居酒屋文化に詳しいマイク・モラスキーによれば、なかでも「「コの字」という形は比率では一番多くなくとも、最も客同士の共同体意識を生み出す形ではある」のだとか。
まっすぐなカウンターの場合、両隣以外の客くらいしか意識することはなく、顔も見えにくく、すぐ近くに座っていてもしばらく飲んでいれば、次第に自分ひとりの空間に没入してしまう。対して、「コの字」だと、誰もがほかの客の顔を見ることができるし、同時に常に見られてもいるから、カウンターは自然と「みんなの場」になっていきやすいのだと。
もちろん、牛丼のチェーン店のように「コの字」型でも客同士の関係が「薄い」場合もあるが、タイミングを見計らって気配りさえすれば、ここぞというタイミングで誰かの会話に入っていくのも比較的容易で、逆に黙っていてもそれほど不自然にはならない。そういう、寛容な雰囲気の中で、ほどよい秩序が保たれるのが「コの字」型カウンターの最大の特徴なのだ。
今週のみずがめ座もまた、誰と対するのであれ、どんな場面を迎えるのであれ、心に「コの字」型カウンターを作って、ほどよい繋がりと適切な距離感を守っていきたいところ。
みずがめ座の今週のキーワード
喫茶店や酒場ではみな自然とボケている





