みずがめ座
あっちへふらふらこっちへふらふら
永劫は過ぎ去りはしない
今週のみずがめ座は、トラルファマドール星人の助言のごとし。あるいは、「四次元空間」から心を集中するべき人生の瞬間を改めて選択していこうとするような星回り。
アメリカを代表するSF作家カート・ヴォネガット・Jrの『スローターハウス5』という作品があります。主人公のビリー・ピルグリムという男性は、時間のくびきから解き放たれた<けいれん的時間旅行者>であり、みずからの人生のいろんな場面へ自分の意志とは無関係に唐突にジャンプしてしまいます。
彼は第二次大戦に従軍していた頃、ドイツのドレスデンで13万5000人もの命を奪った大空襲を経験し、除隊後に金持ちの娘と結婚し眼鏡屋となって成功しましたが、結婚式の晩にトラファマドール星人にさらわれて動物園に入れられてしまいます。そんなジェットコースターのように波乱万丈かつ直線的な人生を、小説ではあちこちに飛びながらあらためて追体験していくのです。
この小説におけるトラルファマドール星人は四次元空間に存在しており、すべての時間を同時に視ることができるのですが、小説のなかばで主人公に次のようなアドバイスをする一節があります。
人生のなかばを過ぎるころ、トラルファマドール星人がビリーに助言することになる。幸福な瞬間だけに心を集中し、不幸な瞬間は無視するように──美しいものだけを見つめて過すように、永劫は決して過ぎ去りはしないのだから、と。もしビリーにその種の選択が可能であったなら、彼はもっとも幸福な瞬間として、馬車のうしろで日ざしをいっぱい浴びながらうたたねしたこのときを選んだことであろう。
人は永く生きていれば、必ずどこかで自分や他人の取り返しのつかないような愚かさに直面することがありますが、そうした事実を事実として受け止めたまま直線的に生き切ることは、人間にはおそらくできないでしょう。そして、断片としての耐えがたい事実をギリギリのところで繋ぎとめてくれるのは、トラルファマドール星人が示唆したような「幸福な瞬間」の記憶であるように思います。
10月3日にみずがめ座から数えて「There」を意味する9番目のてんびん座で新月(種まき)を迎えていく今週のあなたもまた、そんな「幸福な瞬間」を改めて選択して時間旅行にいそしんでみることをおすすめします。
呪縛をときほどく
アーティストやクリエイターの歴史をみればわかるように、古来より「何を知り、何を為すべきか?」という問いに対し社会が用意する答えや役割にハマらず、余計なことばかり知りたがり、やりたがる者たちによって、「精神」の多様性は耕され、育まれてきました。
日本神話のアマテラスに対するスサノオのように、彼らはしばしば無法者や乱暴者とされ、お上から規定された定位置から追放され、地上世界をふらふらとさまよっていくことで、創造性の種を撒いていったのです。
その意味で、今週のみずがめ座もまた、いっそ「無法者」や「ごろつき」になりきることで「~すべき」といった意識の呪縛をほどいて、精神に「遊び」をつくっていくことを心がけてみて下さい。
みずがめ座の今週のキーワード
けいれん的時間旅行者