みずがめ座
さりげない変化こそ一大事
「ほどけそめたる」の質感
今週のみずがめ座は、『大利根にほどけそめたる春の雲』(安東次男)という句のごとし。あるいは、この世界の空気感の微妙な変化を嗅ぎつけていこうとするような星回り。
「大利根」は坂東太郎という別名もある、流域面積は日本一を誇る一級河川である利根川のこと。ただし、掲句の肝はその上空にたなびく雲にある。
いよいよ待ちに待った春を味わおうと戸外に出かけ、とりあえず近くの利根川をめざした。心なしか水面から反射されてくる日差しも柔らかくなった気もしたが、それよりも作者にとっては川の上の雲の動きの方に、より春らしさを感じたのだろう。
これがもし、もくもくと雄大にたちのぼる「夏の雲」だったなら、「ほどけそめたる」のなんとも繊細な感じとは対極的だったはず。また、冬の低く垂れ込める暗く硬い雲も似合わないし、秋の鰯雲のような高いところに累々と横たわっている雲の感じも、やはりそぐわない。
やはり、この句の眼目であるほどけつつ、穏やかな温かさと湿り気の中に溶け去っていく雲の見られるような、どこか艶めかしくエロティックな空気感こそが、真の春の主役なのかも知れない。
3月4日にみずがめ座から数えて「中長期的な流れ」を意味する11番目のいて座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、表面的な出来事や浮き沈みに一喜一憂するのでなく、もっとそこにわが身を浸したくなるような空気感をどこでなら感じられるかということに集中していくべし。
「スピリチュアルな」健康を配慮する
例えば、1999年のWHO(世界保健機関)総会において、「健康の定義」をめぐり従来の身体的・精神的・社会的なウェルビーイングに対し、「霊的(スピリチュアル)な」という第4の項目を付け加えようという提案が主に中東諸国からなされたものの、最終的に否決されたということがありました。
現代では「霊的」などと書くと、とたんに胡散臭い印象を持つ人が多いと思いますが、この「スピリチュアル」という言葉は、前世や守護霊やオーラなどのパワーワードと関連するようになる以前は、本来季節のうつりかわりや月や太陽など自然や宇宙の大いなるサイクルと調和した状態を指していました。
つまり、いくら食生活や睡眠に気を付け、読書や映画などでメンタルを柔軟に保ち、仕事や友人付き合いなど社会生活に何の問題もなくても、私たちはそれでもなお頼りなく、不安定になってしまうリスクを抱えているのではないか、という指摘がそこには含まれていたということです。
その意味で、今週のみずがめ座もまた、身体の微妙な感覚のゆらぎを解き放っていくための時間をきちんと確保していくといいでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
「スピリチュアル」を「ゴーストリー(ghostly、ぼんやりとした、幽霊のような)」に言い換えてみる