みずがめ座
しぶとさを練る
あえて愚図を晒す
今週のみずがめ座は、『恋猫と語る女は憎むべし』(西東三鬼)という句のごとし。あるいは、吐息に本音をまぜて放っていこうとするような星回り。
「恋猫」とは、本格的な春が近づいて発情期を迎えたメス猫のこと。そんな恋猫に呼応するかのように、掲句の「女」は「はいはい、あんたも相手が欲しいのね」とか「さみしいよね。男の人が来てくれなくて」とか、あるいは「男ってみんな愚図しかいなくて、イヤになっちゃうわよね」などと言ってるわけです。
それを「憎むべし」と書いた作者は、ひょっとしたら少し精神を病んでいたのかも知れません。少なくとも、一時的に女性不信のような状態に陥っていたのでしょう。「そうやって、みんなして俺のことを悪く言っているんだろう」「そうさ、自分はしょせん男さ、どうしようもない愚図さ」うんぬん…。
「憎むべし」という書きぶりはある種の老いの兆候とも言えます。この時、作者は40代半ばくらいでしたが、自分の精神的なやわさを持て余しているかのような印象を受けます。
しかし、と同時に、こうしたみずからのやわい部分をとりすました顔の下に隠してしまう代わりにみずから晒してしまうところに、やはり作者の俳人としての面白さや奥深さがあったようにも思うのです。
2月24日にみずがめ座から数えて「自我の弱まり」を意味する8番目のおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、三鬼よろしく、自身の精神的にやわな部分を蔵出ししてみるといいでしょう。
エントロピー増大への反抗
エントロピーとは「混沌」という意味で、宇宙の大原則として、あらゆる物事はエントロピーが増大する方向にしか動いていきません。秩序あるものは時間の経過とともにカオティックに混乱していき、一点に集まったエネルギーもやがては分散していく。つまり、いくら整理整頓した机も散らかるし、熱烈な恋もいつかは冷めてしまうのだと。
そして、そんなエントロピーの増大に絶え間なく抵抗しているのが、すべての細胞を入れ替え続けることで死を免れて「生きて」いる人体であり、生命の働きなんです。
興味深いことに、生命は細胞が自然に壊れる前に先回りしてみずからを壊し、その不安定さを利用して新しい細胞を作り出す活動をしているんですが、それでも新たに作られる細胞より徐々に壊れていく細胞が増えていくことで、人は老い、死を迎える訳です。
今週のみずがめ座もまた、こうした生命が細胞レベルで行っている宇宙への抵抗を、人生における活動レベルで行っていこうとしていくのだと言えます。つまり、個人としての弱さや未熟さ、老い、死などを受け入れつつも、強さや若さ、しぶとさやみずみずしさを湛えた自分へと生まれ変わるための決定的なアクションを、取れるかどうかが問われていきやすいタイミングであるということ。
みずがめ座の今週のキーワード
先回りして自らを壊す