みずがめ座
水の動きへのシンクロ
「人も時化だったのだ」
今週のみずがめ座は、『空も人も時化る』(種田山頭火)という句のごとし。あるいは、山頭火とともに海沿いの道を歩いていくような星回り。
「時化」というのは、海が荒れるということです。でも、この句では海のことは言わないで、空と人のことを言っている。でも、「空も人も」と言っていますから、海が荒れていることはここでは暗黙の了解なのでしょう。
作者は雲水姿で全国各地をふらふらしていた人でしたから、この句をつくったとき、ものすごい高波がときどき襲ってくるような海沿いの道を旅していたのかも知れません。そして、目を閉じていても脳裏に浮かんでくるくらい、時化っている海をよく目にしていた。
ふと空をみあげると、見たこともないような分厚い雲がものすごい速さで流れていく。「空も時化か」と思ったところで、今度は自分のこれまでの人間関係に思い至る。考えてみれば、かつて自分と確かな縁で結びついていたはずの人たちも、もうずいぶん遠くへ流れていってしまってしまった。なんのことはない、「人も時化だったのだ」。
死に場所を探してさすらっていた当時の作者の心境を、これほど見事に映し出している句は他にないのではないでしょうか。
その意味で、1月11日にみずがめ座から数えて「集合的無意識」を意味する12番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、ものすごい速さで流れつつある時代精神とおのずと同調していくことになりそうです。
漂白する一艘の舟として
すべてのものは流れ、なにものも留まらず、同じ川に入っていく者には次から次へと新しい水が流れてくる。
今のみずがめ座には、山頭火のようにどこか漂泊する旅人のような風情がつきまといますが、それはものごとをコンクリートで固め、現実のたえず揺れ動いて捉えどころのない側面に蓋をしているような現代的な生への違和感が、どこからかふっと湧いてくるからなのかも知れません。
例えば、俳句の五七五は元をたどれば海洋民におけるオールを漕ぐリズムの記憶を伝えるものであるという説があります。現実の奥底に流れる「水の動き」に同調し、自分のいのちを担保にして移りゆく風景を心だけに写していくこと。そして、舟の底から感じられる自然や死の生音に耳をかたむけていくこと。
そんな俳句の根本にある精神性に、今週のあなたも自然と吸い寄せられていくことでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
オールを漕ぐリズム