みずがめ座
記憶の光景
いつものような静けさで
今週のみずがめ座は、『行年(ゆくとし)や夕日の中の神田川』(増田龍雨)という句のごとし。あるいは、いつも自分を支えてくれているものをよーく労わっていくような星回り。
作者はおよそ100年前に浅草に住み、遊郭の書記として働いていた人。神田川は井の頭公園の池を発端に隅田川に流れ込む形で、東京の中心部を東西につらぬくように流れており、昔は生活用水だったこともあって、東京に暮らしている人びとにとってはつねに暮らしのかたわらにある川です。
なにしろ長いので、上流部は神田上水、下流部は江戸川など、場所によって名称やイメージも異なるのですが、作者の住んでいた地域を考えると浅草橋から秋葉原、お茶の水駅あたりからの眺めだった可能性が高いはず。
いつもなら買い物客や学生などでつねに賑わっているような街でも、年の暮れになればなるほど人の姿も消えていき、途端に火の消えたような寂しさがわいてくるようになります。そして、そんな街並みにあって、ただ夕日だけがいつものような静けさで川の向こうへと沈んでいく。
そんな光景に、ああ今年も一年が終わっていくのだという実感が急に現実味を帯びてきたのかも知れません。その意味で、12月27日にみずがめ座から数えて「自己調整」を意味する6番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、川や夕日など人びとの暮らしの中でいつも変わらない姿で支えてくれるものにこそ意識を向けてみるといいでしょう。
過去との共生
例えば、どんな人の中にも、自分を支え続けてくれている「記憶」というものがあります。ただ、それは普段の日常においては滅多なことでは思い出されず、影に潜んで、まるでいない振りをしているもの。
けれど、どんなに鋭い痛みであれ、思い出すのも苦しい後悔であれ、その「過去」なしには現在の自分はありえないのだと感じているのであれば、その苦しみの記憶はあなたの側からけっして離れていくことはなく、ときどき不意に思い出しては、これからもその「過去」と共生していかなければなりません。
すっかり馴染んでしまったようで目に写らず、どこにもいないようで確かに存在している。今週のみずがめ座の人たちは、そんな「記憶」が意識の死角を突くようにしてスッと自身のそばに流れ込んでくることがあるかも知れません。
みずがめ座の今週のキーワード
記憶と共生していくということ