みずがめ座
ぎりぎりのところを歌う
もしAIでないのなら
今週のみずがめ座は、『きびきびと万物寒に入りにけり』(富安風生)という句のごとし。あるいは、怖いものは怖いと素直に吐露していくような星回り。
ひとつ年を取るということは、ひとつ寒を迎えては見送っていくということでもある。そして、大抵の場合、自分が新たに覚悟を決めるのよりも先に、万物がさっさと寒の構えの中に入っていく(ように見える)。
そのせいか、おのずと不意をつかれたような格好になって、掲句のように冬景色がどこか凄愴に映るわけですが、むろんそれはあくまで主観が誇張されているにすぎません。
作者には他に「寒といふ恐ろしきもの身構へぬ」という句もありましたから、よほどの寒がりか、怖がりなのでしょう。しかし考えてみれば、寒さも怖さも感じないのであれば、それはもはやAIと変わりません。
その意味で、人間であればこそ生まれてくる感慨を、できるだけ簡素に、できるだけ削ぎ落した形で示してくれているところに、作者の円熟味が感じられるのではないでしょうか。
11月27日にみずがめ座から数えて「自己表現」を意味する5番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、外部に示すなら、そうしたできるだけ等身大の主観を切り出していくべし。
詩の成立条件
中野重治の詩に対する姿勢をよくあらわした作品に『歌』という詩があります。中野がそこで追究した命題は、人が人であるために、人が人らしくあるために、どうしても必要なこととは何かということでした。
おまえは歌うな
おまえは赤ままの花やとんぼの羽根を歌うな
風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな
すべてのひよわなもの/すべてのうそうそとしたもの
すべてのものうげなものを撥き去れ
すべての風情を擯斥(ひんせき)せよ
では、どうすれば言いというのか。この詩は次のように締めくくられます。
もっぱら正直のところを
腹の足しになるところを
胸さきを突きあげてくるぎりぎりのところを歌え
今週のみずがめ座もまた、自動的に浮かんでくる思考を内向きに抉るくらいでなければ「歌う」などという表現行為は成立しないのだということを、改めて胸に刻んでおくといいでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
自分に向かって啖呵を切る