みずがめ座
背景の繋がりと広がり
散歩道への親しみ
今週のみずがめ座は、『春雨や蓬を伸ばす草の道』(松尾芭蕉)という句のごとし。あるいは、種族や在り様の垣根を超えた関わりの中でこそ、いきいきとしてくるような星回り。
作者が46歳の作。人生50年時代の江戸時代ですから、もう最晩年です。この春に、芭蕉はいよいよ人生最後の旅となった『おくのほそ道』の旅に出ました。とはいえ、掲句はそんな旅の風情とは対照的な日常における散歩道を描いた、比較的地味な部類の作品と言えるでしょう。
いつまでもしとしとと降りつづくのが「春雨」ですが、そうして雨が降るたびに野の草が丈をのばしていく。草餅のために摘んだ「蓬(よもぎ)」なんかも、いつのまにか伸びている。これは雨と道とが力をあわせて蓬を伸ばしたに違いない、という見方がおもしろい。
おそらく、何のパロディな訳でもなく、通いなれた散歩道への親しみを込めた一句なのではないでしょうか。
伝統的な季語を自分の暮らしのなかで受け止め、そこからこぼれ落ちてきた句であり、だからこそ現代の私たちでも素朴に味わえる。そのこと自体、とてもありがたく、嬉しいことですね。
15日にみずがめ座から数えて「ネットワーク」を意味する11番目のいて座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が結んでいるネットワークがどれだけ豊かなものであるか、改めて見つめ直してみるといいでしょう。
交流の味わい
ひとりの人の後ろには、実にいろいろな存在や景色が交差していて、実際ひとりの人間が自分の運命について語りだそうとすれば、その親や祖父祖母、兄弟姉妹、友人、恋人、幼馴染、故郷や、いま住んでる場所の風土などが、さまざまに混ざりあっていく訳です。
もちろん、いちいちそれらすべてを認識したり交換できたりすることができないのは当然ながら、この世に生きているということの醍醐味は、そうした生きた交流の連鎖を通して、互いの運命が侵食しあっていくことにあるのではないでしょうか。
今週のみずがめ座は、そういう生の醍醐味を淡々と味わったり、分からないなりに寄り添っていくタイミングでもあるように思います。
みずがめ座の今週のキーワード
雨と道とが力をあわせて蓬を伸ばしたに違いない、という見方