みずがめ座
はみ出し者のうた
「近代」との距離感
今週のみずがめ座は、『雪晴れて我冬帽の蒼さかな』(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、不意におのれの立ち位置への自覚が深まっていくような星回り。
おそらくは冬の山でおぼえた感興を詠んだ一句。今まで降っていた雪が晴れて、日が明るく差し込んでいる。山野は一面に白く照らし出され、その中で自分のかぶっている冬帽の蒼いことに気が付いた。
澄んだ青空のような爽やかなブルーを表す「青」に対して、「蒼」は草木などの深い青色を表しますが、この場合は気付くと自分が種の違いを超えて周囲の樹々と同一化してしまっていたことにハッと気が付いたということなのかもしれません。
また、青も蒼も高い精神性の現われであり、死者の世界の色でもあり、頭部を守る帽子は自我の象徴でもありますから、ライバルの文学者たちのいる近代的世界からはみ出して、限りなくアニミズム的な世界に入り込んでしまっている自分をどこか哀感をもって眺めているのだとも解釈できます。
いずれにせよ、29日に自分自身の星座であるみずがめ座の半ばに太陽が達して立春を迎えていく今週のあなたもまた、自分自身がいつの間にか平均的な同時代人からだいぶかけ離れた場所に立っていることに気が付いていきやすいでしょう。
そっと歴史を振り返る
身分制が解体され、制度の上では職業選択も結婚も自由になり、近代国家と資本主義の仕組みも確立した明治時代は、文明開化に前進していく明るい側面ばかりでなく、大変に「生きづらい」世界でもあったのだと『生きづらい明治社会』の著者は言います。
それは、新しい社会において「不安と競争」に投げ込まれた人々が、貧困に陥るのは自分の努力が足りないからだという道徳観念をさらに強化し、貧困者や弱者に対する冷たい視線を当たり前のものにしていったからなのだそうですが、150年以上が経過した令和の日本社会もまた、かつての人々とどこか同じ轍を踏もうとしているのではないでしょうか。
世の中には「あまりの複雑さ、わけのわからなさ」に身ごと翻弄される時がありますし、そうすると自分たちが前代未聞の状況に立ち会っているのだと思い込み、さらなる不安に駆られがちです。こうして時おり歴史を振り返ることは、同じ過ちを犯さないためにも大いに必要な事のように思えます。
今週のみずがめ座もまた、少し歩くスピードを落として、一度いまの自分や周囲の状況を見回してみるといいでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
「不安と競走」から離れていくために