みずがめ座
無に親しむ
色彩と無色
今週のみずがめ座は、『死と生を通へる使者の寒鴉(かんがらす)』(三好潤子)という句のごとし。あるいは、華やかさと哀れさで自身を染め上げていこうとするような星回り。
言うまでもなく、この「寒鴉」とは幼い頃からつねに病気がちで、片足を死の世界につっこみ続けてきた作者自身の自画像でもあるのでしょう。
作者は艶なる自分をみせるべく、「夕焼」や「火」、「曼殊沙華」など、華やかな色彩の素材(特に赤系統)を好んで使ったことでも有名ですが、その一方で無色の世界とも深く通じていました。
華やかで美しい自分を演出するその裏側では、色褪せ、弱った自分自身を、まるでレントゲン写真で透視したかのように淡々と捉えているもう一人の作者がいる。そしてむろん、無色の世界は死の世界とつながっていて、おそらく作者は生の世界に負けず劣らず死の世界もまた美しいものと見なしていたように思います。
そうして弱っているいのちを振り絞り、あらゆる情熱を句作へと集中していたからこそ、作者は健康人より優れた創作力を発揮できたのかも知れません。
その意味で、12月8日にみずがめ座から数えて「情熱」を意味する5番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自身の身近にある「無色の世界」に改めて焦点を当て、限りある命をいかに燃焼すべきか問うてみるといいでしょう。
「定住漂泊」という言葉
これは俳人・金子兜太がまだ日本銀行に勤めていた53歳頃、2年後の定年を前に自身の生き方を定めるつもりで書いた本の題名であり、そのまま彼の生き様を表した言葉です。
「定住」という言葉はある。「漂泊」という言葉もある。ただ、その2つを4文字の熟語として体験的にひとつに統合していったところに、その意味するところはありました。
さすらい、漂泊の心性、心というものをみんなもっている。世の中が豊かになればなるほど逆に、漂泊の心性に憑かれて、独りの道を歩むようになる。歩めなくなった場合でも、定住した状態でその漂泊の心性を温める。温めることのなかから何かが生まれてくる。それが創作のエネルギーになっている。そういう意味で、漂泊の心、心性、これが人間にとって基本のものはないか。(黒田杏子『金子兜太養生訓』)
金子にとって、漂泊とはある種の情念であって、必ずしも放浪生活を必要とはしなかったのでしょう。そうではなくて、反時代の、反状況の、あるいは反自己の、定着することができない魂の在り様であって、その芯の部分には「無」や「虚」があったのだと思います。
今週のみずがめ座もまた、自分の中にある日常では決して満たされない部分を薄めてしまうことなく、肯定し受け入れていくのか否定し絶っていくのか、問われていくことになりそうです。
みずがめ座の今週のキーワード
漂泊の心性を温める