みずがめ座
火のない所に煙は立たぬ
「この枯れ」と「胸の火」
今週のみずがめ座は、「この枯れに胸の火放ちなば燃えむ」(稲垣きくの)という句のごとし。あるいは、自分でも意外なほどの感情の高ぶりに驚いていくような星回り。
「この枯れ」とあるのは、おそらく恋愛として絶望的な状況のことなのでしょう。そういう状況にあるのに、いや、そういう状況にあるからこそ「胸の火」はより大きくなる。
相手へと、特定の対象へと向かう情念はより一層高まり、状況の冷えと反比例するかのように、内面の熱が際立って感じられているのです。ただ「火放ちなば」とあるように、実際に胸の火を放つ、つまり自分の思いを実現するような行動をとることはこの時点ではこらえられており、そうしたギリギリのところでこの句は詠まれています。
おそらく作者の激情は、こうして書き留められ、句として昇華されることで、ことなきを得たのでしょう。もともと作者は若いころに女優として映画に出演していたこともあるので、ここで詠まれたことも実際にあったことではなく、ある種の架空の役柄を演じているだけなのかも知れませんが、ただ事実や具体的な設定はどうであれ、これほど激情を見事に捉えた句もそうそうないのではないでしょうか。
19日にみずがめ座から数えて「熱情」を意味する5番目の星座であるふたご座で満月を迎えていくところから始まった今週のあなたもまた、はじめは“ふり”や役割としてこなしていたことに、いつの間にか情が湧き、熱情が芽生えていたことに改めて気が付いていくかも知れません。
精妙な火
例えば子どもの心というのは、天使でもあると同時に悪魔でもありますが、アリストテレスなどはその著書の中で「子どもの心は火である」と述べています。
これは占星術の基本概念でもあるエレメント、すなわちこの世にあるものは火・土・風・水の4つの元素の混淆によってできており、そのうち火はもっとも精妙なエレメントであり、燃え盛り上昇していく力として位置付けられた力のことを指すのだということを踏まえると、その意味がより明確になってくるかと思います。
「精妙」というのはただ単に軽いという意味ではなくて、重さを持つほどに凝固することなく、形を持つほどに一定ではないくらいに自由であるということ。
悪魔のように勢いよく燃え盛りつつ、天使のように精妙に自由であるように。それは誰のこころの中にもある子ども心(インナー・チャイルド)であり、同時に、掲句の作者のように、何かがきっかけで火がついてしまった人の魂の姿でもあります。
今週のみずがめ座もまた、自分の内なる火が自然と猛っていくだけでなく、精妙なものとなっていくのを感じていきたいところです。
みずがめ座の今週のキーワード
火のあるところに人は集まる