みずがめ座
否応なしにそうするしかないこと
震える父と叫ぶ少年
今週のみずがめ座は、チェーホフの『かき』のワンシーンのごとし。あるいは、いつの間にか巻き込まれていた事態に改めてまなざしを向けていくような星回り。
チェーホフの「かき」は、晩秋のモスクワを舞台に、すでに5カ月間も失業状態が続いている父親が登場する短編小説なのですが、ついにお金がなくなって、路上で物乞いをするしかなくなったシーンが、父親を見つめる少年の視点から描かれていきます。
その目つきから、ぼくは父が通行人に何か話しかけようとしているのがわかる。『どうぞ、おめぐみを』というつらい言葉は、重い分銅のように、父のふるえるくちびるにひっかかって、どうしてもとびださない。
この後、そうした父の姿をじっと眺めていた少年は、通りの向かい側に「かき」の文字を見つけ、父親にそれが何を意味するのか教えてもらうと、空腹に耐えきれなくなって、通りの人たちに向かって「かきをおくれよ!」と懇願し、じゃあ食べてみろよとお店で笑いものにされてしまいます。
そういう、非常に冷徹かつ残酷な描写が出てくる小説なのですが、ここには人間の尊厳がいかに壊れやすいものであるか、そして、容易に踏みつぶされてしまうかという社会悪の問題が的確に表現されているように思います。
27日にみずがめ座から数えて「悪縁奇縁」を意味する8番目の星座であるおとめ座で下弦の月(気付きと解放)を迎えていく今週のあなたもまた、もし自分が上記のような場面に接したならどのように振る舞うべきか、鋭く問われていくことになるかもしれません。
穴をさらす勇気
先の「かき」のワンシーンは、自分に不足しているものが対象化されていく過程をとりあげた場面という風にも言えますが、それを自らに促すには自分の弱点や気にしていることをデフォルメして名前を付けてみるのも効果的です。
例えば、お金を無駄遣いしてしまう自分が嫌ならば、あえてそんな自分を「マネーの虎」とか「財布バカ」とでも名付けてみるのはどうでしょうか(分かりやすさが大切)。
というのも、そうして自分の弱点や欠点に名前を付けるのは、身近な人やパートナーに認識してもらったり、少なくとも話題にあがりやすくすることが目的だから。そうして自分の穴について言及しやすい状況を作っていくことで、「じゃあ僕が/私がこっちの穴を埋めるから、あなたはこっちを埋めて」という関係が成り立ちやすくなっていく訳です。
いずれにせよ、自分の弱点や欠点を対象化していくためには、まず自分の穴をさらけ出す勇気と、欠点を欠点のまま抱えて生きる開き直りが必要。ぜひ今週はお試しあれ。
みずがめ座の今週のキーワード
「かきをおくれよ!」