みずがめ座
密やかな癒し
こちらは8月16日週の占いです。8月23日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
もう一人のウェーバー
今週のみずがめ座は、近代資本主義のロジックからの脱獄犯のごとし。あるいは、肩書きの自分こそが本当の自分であると改めて感じていくような星回り。
ドイツを代表する社会学者であるマックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で、「世俗内禁欲」ということを言っていました。これは宗教者が修道院の内側で禁欲するというのではなく、資本家が俗世のなかで商売を営みながら禁欲するということをそう呼んだのです。
つまり、自分の職業に励むのは、金銭的欲求やぜいたくのためではなく、神の思し召しにかなうためであり、そうして真面目に働いていくことで人は救われるのだ、と。ウェーバーはプロテスタントの「世俗内禁欲」が資本主義の「精神」に適合性を持っていたとして、近代資本主義の成立を理解しようとしたのです。
しかし、そうした立派な職業倫理について述べた彼自身は、決してその枠内にとどまる人間だった訳ではなく、ある時期に精神異常をきたし、オカルトに走ったこともありました。おそらく、自分の主張した倫理的な職業人としての“仮の世界”とは別に、ただの人間として在れるような“真の世界”が別にあるとどこかで感じていたのではないでしょうか。
16日にみずがめ座から数えて「世間の約束事」を意味する10番目の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていくあなたもまた、むしろそういうものを打ち破ったところに、自分なりの居場所を見出していこうとしていくはず。
業病と自由
なぜそんなものを抱え込んでしまったのか人に上手く説明できず、自分でもいまだ納得できないような厄介なものを、「業病」と言い表すことがありますが、たとえば聖母マリアにとっては<聖母>という役目や名称もまた業病のようなものだったのかも知れません。
実際、それは逃れようとしても逃れられない病気のようなもので、治す治療法も薬もなく、それをそれとして受け入れ、なんとか付き合っていくしかありません。ただそれはそれとして、しばし業病を脇において別のことに没頭したり、背を向けていく自由が与えられているのも人間であるはず。
キリスト教では、聖母マリアを性的に見ることはタブーであり、絵の場合、一般的には乳房は衣に包まれていなければならないとされていましたが、16世紀には「授乳のマリア」という題材はよく描かれていたようで、すなわちマリアが性的であるということもまた、そうした自由な人間を生きることの表現に他ならなかったのだと言えます。
今週のみずがめ座も、業病を抱えつつも、それをどうにか切り抜けて、生きようとしている。きっと作者は、そうした誰にも描かれていないマリアをこそ、自分の脳内に思い浮かべてみるべし。
みずがめ座の今週のキーワード
性的であるということのもたらす偶有性