みずがめ座
むき出しの自分を晒す
内なる自然の逆襲
今週のみずがめ座は、「この枯れに胸の火放ちなば燃えむ」(稲垣きくの)という句のごとし。すなわち、自分のなかにある激情を思い知らされていくような星回り。
作者は元女優で引退後に茶道教授をしながら俳句を詠んでいった人物。19歳で結婚し、20代前半で離婚した後は独身で通しましたが、おそらくは表沙汰には出来ないような秘めた恋があったのではないでしょうか。
掲句はまさにそんな作者の背景を彷彿とさせる恋の句。「この枯れ」とあるのは、眼前に広がる実景であると同時に、一歩間違えれば大惨事を招くような危うい事情や関係性のことを含ませているように思われます。
そこに胸の内にたぎる恋情の炎を放ってしまえば、きっと一切が燃えさかる凄まじい光景が広がるだろう、と。状況の冷えと内面の熱の対比が見事に利いた句ともなっている訳ですが、実際には自分の思いをそのまま遂げるような行動は押さえつけられており、それを句にすることでギリギリ踏みとどまっていたのかも知れません。
あるいは、こうした気軽に表に出せないという状況こそが、内なる恋の炎をここまで激しいものに育てたのだという流れも不自然な話ではないはずです。
30日にみずがめ座から数えて「瞬間的な思いの高まり」を意味する5番目のふたご座で月蝕の満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分のなかにまさかこんな激情が潜んでいたのかと驚き、逆襲される瞬間が出てきたとしてもおかしくないでしょう。
文明と自然
例えば自然を語るのでも「自然にやさしく」とか、「地球環境を守ろう」なんてスローガンなどでは、自然というものはいかにもしらじらしく、ひ弱で安全なものに思えます。
感覚的にもなんだか実感が伴わないので遠い感じがするし、だいいち、自然が自分の生存を直接的に脅かすなんて想像もしていないからこそ、「自然に対して優しくふるまってあげよう」なんて上から目線の発想が出てくる訳です。
でも実際には、文明の築いた堤防が津波にあっという間にもっていかれてしまったように、自然はときに猛然と人間に襲いかかってくる。いや、自然の側から言えば、べつに「襲いかかった」訳ではなくて、ただその素顔をちらっとあらわしただけの話なのです。
自分を「むき出し」にしていく、ということの本質もまた、恐らくこういうところにあるのではないでしょうか。自然に躍り出てきた本性を、理解しやすくならしてしまうのではなく、できるだけそのまま受け入れていくこと。まずはそこがスタート地点になっていくはず。
今週のキーワード
エクスタシス(瞑想、祈り、舞踏、宗教的儀礼)