みずがめ座
必要な回り道
夜のサイレン
今週のみずがめ座は、「水中をさらに落ちゆく木の実かな」(鈴木鷹夫)という句のごとし。あるいは、ゆっくりと新たな何かが始まりつつあるのを感じ取っていくような星回り。
「水中をさらに」とあるように、それ以前は空中を落ちてきた木の実が、ぽちゃんと音を立てて、澄んだ深い水の中を沈んでいったのでしょう。
水の抵抗を得たことで、落下の速度は変わり、微妙に遅くなっていくのを作者は感じ取っている一方で、木の実がそこについたところは描かれないし、おそらく作者の想像のなかでは永遠に落ち続けていくのではないでしょうか。
一読した際、これとどこかで似たような経験を自分もしていると感じたのですが、それは子供の頃に玄関の外を通りすぎてゆく消防車のサイレンでした。
家の前を通過するまではあっという間に迫ってくるのに、家のなかで耳を澄ませてそれを聞こうと集中している現在という一点を過ぎた瞬間から、明らかにサイレン音が間延びしてゆっくりと経過していく。
どこかで、この消防車はいつまでも目的地へとたどり着くことなく、夜の道を走り続けていくのではないかと思った記憶があります。
23日に太陽がみずがめ座に入ると同時に、みずがめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、どこかで自分自身やそれが存在している<今ここ>の瞬間に立ち返っていく契機に直面していきやすいはず。
自分を発見する瞬間
例えば、若き日のチェ・ゲバラは、ブエノスアイレスから7歳年上のはとこと連れ立って旅に出ました。ベネズエラのカラカスで終わるおよそ1万2千キロのその旅は、『モーターサイクル・ダイアリーズ』として2004年に映画化されていますが、その製作総指揮にあたったロバート・レッドフォードは或るインタビューで次のように語っています。
「僕はなぜ彼がチェ・ゲバラになったかという部分に興味があった。エルネスト(※チェ・ゲバラの本名)は旅を進めるうちに、腹黒い政府や団体によって住む場所を奪われてしまった人々の健康や幸せについて考え始める。彼は最後に「自分にはやるべきことがある。自分はこの旅で変わった」と相棒のアルベルトに語る。この旅は彼にとって“発見”ないし“啓発”の旅となったんだ。」
こうした自己の再発見のきっかけは、やはり元をたどれば頭の中の小さな疑問符や違和感にあったのではないでしょうか。そして、疑問符や違和感はいなづまのように一瞬で訪れる一方で、そこから発見を引き出していくには長い時間や一定期間が必要になるものです。
今週のみずがめ座は、そうした時間や期間の始まり、最初の訪れを迎えていくことができるかも知れません。
今週のキーワード
永遠の現在へ向かって