みずがめ座
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亀裂の言葉
今週のみずがめ座は、「死にたいはいいけどまづは汗拭けよ」(北大路翼)という句のごとし。あるいは、生々しい現実に立ち返っていくような星回り。
扱われる題材の重さに対して会話のような語り口の軽やかさが際立つ一句。
そもそも作者が言った言葉なのか、それとも誰かに言われた言葉なのか。
それはこの際、どっちだっていいのでしょう。言葉は使い方によって、肌を突き刺すナイフにもなれば、傷口をふさぐための包帯にもなります。
ここでは「死にたい」という負の呪力を帯びた言葉が暴走している情景が前提とされており、吹き出し流れる汗という生理現象はほとんど顧みられることないまま進行していて、それを指摘してくれる他者がいます。
きれいな言い方をすれば、他者を介してひとりの人間の中でタナトスとエロスが交錯していくということになりますが、本当はこの句の眼目は「まづは」という言い方の生々しさこそ肝でしょう。
14日にみずがめ座から数えて「まだ気づいてないこと」を意味する12番目のやぎ座にある木星・冥王星に改めて焦点があたっていく今週のあなたもまた、芝居がかった日常や、うわっ滑りしているコミュニケーションから、なんとか抜け出していくことがテーマとなっていくでしょう。
日常と演技と亀裂
日頃より懸命にこの世を生き、平凡なサラリーマンであれ、家庭を支える大黒柱であれ、自由だけれどさみしい独身中年であれ、演じている役柄に熱心に打ち込めば打ち込むほどに、「本当の自分は何者なのか?」といった問いは、どんどん忘れ去られていく。
というより、そうした忘却こそがこの世でうまく生きていく上での大前提なのです。
しかし時折、役柄上の自分は本当の自分自身ではないのだということを、ふと感じてしまうことがあります。一度それが出てきてしまうと、目の前で展開されていく現実劇や演技においてNGを出したり、これまでスムーズに乗れていた脚本に乗れなくなったり、慣れ親しんだ日常舞台がとたんに嘘っぽく、居心地の悪いものになっていくもの。
今週はふとしたきっかけから亀裂が入り、そこからニョッキリと顔を出してくる違和感や不安が無視できなくなった時、どうするべきかを問われていくようなタイミングとなっていくでしょう。
あるいはそんな時こそ、私たちは夜空に月でも見上げるべきなのかも知れません。
今週のキーワード
忘却から醒める