みずがめ座
大人のかくれんぼ
面影のあの人
今週のみずがめ座は、ホフマンスタールの『夢のなかの少女』という詩のごとし。あるいは、いつもは心の奥底で静かに眠っている理想の夢がひとり歩きしていくような星回り。
いちども/愛したことのないはずの
女のひとが
ときおり/わたしの夢のなかに
少女となって/あらわれてきます夢からさめると/わたしは
少女といっしょに/日暮れどき
遠い道を/どこまでも
歩いていったような気がします
こんな夢を見てしまったら、一日中、夢で見た少女の面影をちらちらと追ってはぼーっとしてしまいそうです。
とはいえ、ときおり夢に出てくる決まった人物との関係を、どう受け止めていいのか分からないという感情は、多くの人が一度は味わったことのあるものではないでしょうか。
ただ、いつもならすぐに忘れてしまうのに、夢から醒めても相手の姿が離れていかない。それを詩人は「どこまでも(いっしょに)歩いていったような気が」すると表現してみせた訳ですが、実際そうして歩いていくことでしか、遊離してしまった魂の一部を取り戻す方法はないのです。
12日にやぎ座から数えて「精神の躍動と遊び」を意味する3番目のおひつじ座で火星に月が重なっていく今週のあなたもまた、ふとしたきっかけやもののはずみで予定調和や想定の範囲外へと一気に誘い出されていきそうです。
何かが起こりそうな気配を捉える
現代社会に暮らす私たちは、同じようなことばかり起こる日常の連続をごくごく平凡なことだとか、代わり映えしない退屈なことと思いすぎる傾向があります。
そこで、何か劇的な変化を求めてついつい変わったことをして有名になろうとしたり、海外旅行へ行ったり、出会いを求めたり、家を変えたり、酔っ払らおうとしたりする。
けれど、何かが起こりそうな気配の発生してくる震源地というのは、非日常ではなく、むしろ日常の中に埋没して在るものです。一見なにも起こらない“閑静な”シーンにこそ、目を向けるべき対象は潜んでいる。
例えば、「あの三流の付き人を演じているのは、一流の役者かも知れない」といった、「ひょっとしたら」の感覚。それが幾度か重なり、「まさか」の渦となって高揚し始めてきたとき、現実はあっけなくひっくり返り、スッとかすかな消息を残してどこかへ消えてしまったりする。夢の「少女」がこちらに振り返ってくれるのも、そんな瞬間なのではないでしょうか。
今週のキーワード
魂を追いかけて