みずがめ座
無為と自然
地球における人間の位置
今週のみずがめ座は、「蟲鳥のくるしき春を無為(なにもせず)」(高橋睦郎)という句のごとし。あるいは、何をすべきかより何をするべきでないかを問うていくような星回り。
伝統的に、春は来るのを待ちに待ち、去るのを惜しみに惜しむ季節であり、いざ来れば小躍りしてその到来を祝う特別に喜ばしい季節とされてきました。
しかし、掲句はそんな春を、蟲(むし)や鳥たちなど、自然界の厳しい食物連鎖の掟下にある生きものにとっては、大変苦しい季節であると言うのです。
確かに、蟲たちは自分が捕食されないために動き出さねばならず、鳥たちも捕食するために働きに出て行かなければならない訳で、春が「喜ばしい」のは人間にとってだけだったのかも知れないという気さえしてきます。
下五の「無為(なにもせず)」とは、食物連鎖の外にある人間であっても、蟲や鳥の苦しさに呼応して、春が来たとはしゃいで回るべからずということでしょう。
16日(日)にみずがめ座から数えて「この世界での役割」を意味する10番目のさそり座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたにおいても、自分たちに対して、できる限り厳しくいさめるような目を持っていきたいところです。
人間クリスの試み
実話を元にしたアメリカ映画『イントゥ・ザ・ワイルド』は、裕福な家庭でエリートとして育った青年クリス・マッカンドレスが、大学卒業を期に、身分や名前さえ捨てて北(アラスカ)へと旅立つというストーリー。
彼は、旅の中で様々な出会いを通しその旅を楽しみつつ、最後はアラスカの自然の最中で衰弱死してしまいます。ですが幸いなことに、そうした最後の日々において彼が何を考えていたのかは、残された日記を通して窺い知ることができます。
中でも次の言葉は、彼なりの旅の総括だったのかも知れません。
「人生において必要なのは、実際の強さより、強いと感じる心だ。 一度は自分を試すこと 一度は太古の人間のような環境に身を置くこと 自分の頭と手しか頼れない 過酷な状況に一人で立ち向かうこと」
ある意味で彼は、掲句の「無為」を命を懸けて実践した人間のひとりであり、人類へ巨大な疑問符を投げかけたのだとも言えます。今週のみずがめ座は、そんな彼の「心」をいつも以上に近くに感じられるのではないでしょうか。
今週のキーワード
ガイア