みずがめ座
冷たいロマン主義
純粋展望
今週のみずがめ座は、「星流る身後のわれの何ならむ」(山口誓子)という句のごとし。すなわち、過去の暗示ではなく、未来の兆しを受け取っていこうとするような星回り。
「何ならむ」とは「何であるのだろう」の意で、目の前を尾を曳くように流れ去っていった星に、自身の運命などの超心理的なものを仮託している訳です。流れ星は古来より不吉な出来事や死を暗示するものとされてきましたが、この句にもやはり不安の影が色濃く現れているように思います。
でも、作者はそれをなかったことにしたり、引き出しにしまいこんでしまう代わりに、こうして自分なりの生きた証しとして後世に残し、それを発表した点で、余人と一線を画していきます。
おそらく、星の流れに自身の命運を重ねた一瞬のあいだだけでも、過去から解き放たれ純粋に未来を思う自分であれたことに、秘かな感動を覚えていたのではないでしょうか。
あるいは、掲句を作った頃、作者は長い療養生活を余儀なくされていましたから、日の当たらない夜空の冷えを持つところに、親近感を覚えていたという事情もあったのかも知れません。
同様に、22日(金)にみずがめ座から数えて「未来への展望」を意味する11番目のいて座へと太陽が移っていく今週は、過去の延長線上を生きざるを得ない自分という存在を突き放して、純粋かつ冷静に未来へと思いを馳せていくことがテーマとなっていきそうです。
クレーの日記より
第一次世界大戦が始まった頃、画家パウル・クレーは自身の日記に次のように書きつけていました。
「この世に生きるべく鼓動していたわが心臓は、とどめをさされて息果てんとしていた。私は考えた。<これらの>ことと私とを結ぶものは、ただ想い出に過ぎなくなるのだ。」
「私はこの肉体を捨て去り、いまや透明な結晶体となるのだろうか。」
この「透明な結晶体」という文言はやがてクレーの中で「冷たいロマン主義」という言葉となって、以後彼の思想の中核をなしていきました。
みずがめ座というのも、どんなにクールに見えようとも、必ずどこかにそうした「冷たいロマン主義」のようなものをを秘めている人たちでもあります。
その意味で今週は、普段は胸に秘めている憧れや願望、ないし感動を、具体的な未来に向けてどれだけ純粋な状態へと結晶化させていけるかどうかが問われていくでしょう。
今週のキーワード
星流る。運命も流る。