みずがめ座
‟もののはずみ”に乗っていく
タレス先生の言行一致
今週のみずがめ座は、星に夢中になって異界へ落っこちていったタレスのごとし。すなわち、あの世からこの世を見ていくような、視点の転換を経験していくような星回り。
古代ギリシャの哲学者タレスは、紀元前585年の日食を予言して見事的中させた話などで有名な、人類史上でも第一級の碩学ですが、プラトンの『テアイトス』にはタレスが頭上の星に気を取られて空の井戸に落っこちて、下女にからかわれた話が出てきて、星の学徒としてはむしろこうしたエピソードを通して、気の毒やらおかしいのやら、彼に親しみを感じて行く人が多いでしょう。
おそらく、井戸の底に落っこちた際、タレスの眼前には先程とは違った意味での星が見えていたことと思われます。
あるいはこれは単なる人間味あるエピソードというより、宇宙万有の生成変化の大元にある原理を「水」で説明し、「大地は水の上に横たわる」という言葉を遺したとされる彼の思想の寓話的表現であったのかもしれません。
いずれにせよ、人生をかけて“何か”を考えていけば、必然的に本人の生き様や具体的にエピソードにも本人の思想や哲学が反映されていくということはそう珍しいことではないはず。
今週は8月1日(木)にみずがめ座から数えて「研究対象」や「専門領域」をも意味する7番目のしし座で新月を迎えていきますが、先のタレスのエピソードを踏まえるなら、これは自分が考えずにはいられないテーマが何なのかということを改めて突きつけられていくのだ、という風にも言えるように思います。
意味のある偶然の一致
なおタレスの最期は、競技見物のあいだに日射病で亡くなるというものだったのですが、それについても次のような詩が『ギリシャ詞華集』に載っています。
「太陽ゼウスよ、昔おん身は、スタディオンより、競技を見物していたる賢者タレースを天上へ連れ去り給いぬ。 よきかなゼウスよ、彼を連れ去りて、おん身の傍えにおき給いしことは。 老人はもはや地にありて、星を眺むる力を失いいたれはぞ。」
空井戸に落ちつつも、万物の根底にある原理を「水」と喝破したタレスは、強い太陽の日差しによって身体中から水を失うことで、天に召された。しかしそれは、天から地上を眺めるための席につくことを神に認められたということなのかもしれません。
これもまた、徹頭徹尾「自然について語る者」として生きて死んだじつにタレスらしい意味のある偶然の一致と言えますし、今のあなたが求めているものも、そうした意味での偶然なのだと言えるでしょう。
今週のキーワード
「万物は神々に充ちている」(タレス)