みずがめ座
未知の訪れとその蝕知
「あはれ」ということ
今週のみずがめ座は、「岩灼くるその岩かげの雪あはれ」(石橋辰之助)という句のごとし。あるいは、純粋な発見の喜びに、しみじみと浸っていくような星回り。
山登りの醍醐味は、平地で普通に生活している限りは決して目にすることのできない珍しい光景を直接体験できる点にありますが、掲句もまたそうした光景のひとつと言えます。
夏の直射日光を受け、大きな岩の一面が熱く灼けているのですが、その岩陰は冷えていて、雪を残しているというのです。そしてそのあまりの温度差に対する驚きを、率直に「あはれ」と表現している。
江戸時代の国学者・本居宣長はこの「あはれ」について、
「うれしかるべきことはうれしく、をかしかるべきことはをかしく、悲しかるべきことは悲しく、恋しかるべきことは恋しく、それぞれに情の動くが、物のあはれを知るなり」
と述べており、すなわち、「あはれ」とは喜怒哀楽すべてにわたるとしています。
その上で、「あはれ」という心の働きは「物にじかに触れる、そしてじかに触れることによって、一挙にその物の心を、外側からではなく内側から、つかむこと」という本質的な把握の仕方として積極的に称揚したのです。
23日(火)にみずがめ座から数えて「他なるものと向き合うこと」や「開かれた関わり」を意味する7番目のしし座に太陽が入っていく今週は、そうした「じか」の触れあいや、素直な感情表現といったことがテーマとなっていくはず。
予祝としての感情表現
昔から、通常の手段では知り得るはずのない「未知の情報」を、不意に受け取ってしまうことを「虫の知らせ」と呼んできましたが、それは神のおとずれのようなものかもしれません。
日本の神はどこかにじっと常駐していることはありません。
いつもは山の奥深くや海の彼方にいるか、あるいは移動し続けていて、ときおり私たちの生存圏に訪れてくる「マレビト(来訪神)」、すなわちストレンジャー(異邦人)なのであり、そうした神は現実が刷新されていく節目に訪れるものでした。
そして、「虫の知らせ」の虫とは、神の来訪を事前に告げ知らせるためのお遣いであり、昔からそうした虫を察知すると日本人は「予祝(よしゅく)」といって、豊作を祈願するにあたり、前もってその実現を盛大に喜び、宴を開いて祝ってきたのです。
今週のあなたもまた、そうした心積もりが大切になってくるでしょう。
今週のキーワード
虫の知らせを受け取ること