みずがめ座
闇のなかの目光る
戦略としての面
今週のみずがめ座は、能における「面」のごとし。あるいは、自分とは別の自分がいるということを、何かしら強い形で打ち出していこうとするような星回り。
ほとんどが死んだ人の話を扱い、冥界から訪れてくる者を演じる能の面というのは、人間の中の影の部分というか、「闇の分け前」みたいなものを表に出すためのある種の戦略であって、考えれば考えるほど演劇というものは大体そういうものなのではないか、という気がしてきます。
つまり、「運命」という名前でしか言いようのないものを可視化していく上で、人間の正の部分を、正の部分として出していくのではどうしても足りなくなってくる。
この世界をひっくり返してやろうとか、そう思いながら闇の中でうごめいていく主体の芽生えみたいなものが面を通して打ち出されていくのでなければ話が済まないのです。
人の心の負の部分というのは、面の下の陰のなかでこそ育ち、打ち出されていくもの。
今週のあなたもまた、自分の中にまだ残っている闇や負の側面に焦点を置いてみてはいかがでしょうか。
うさんくさく否定されるべきもの
仮面という訳語をあてる「masque」という語自体が、フランス語ではそもそも「悪霊」を表し、次いで「魔女」を意味する言葉だったということは思い出しておくのは意味のないことではないはずです。
つまり、「面」という言葉の成り立ちそのものが、どうも文化の負の側面を担うべく運命づけられているように見えるのです。
おそらくそこには、カトリック神学的な人間の肉体への抑圧がベースにあり、ただでさえ肉体の仮象にすぎない「面」は二重にうさんくさく、否定されるべきものだったのでしょう。
でもだからこそ、そうしてある種の排除の原理のなかで切り捨てられてきた想いや情念を現世に再び浮かび上がらせ、きちんと弔いをしていくためにも、誰かが面をつけて背後にある闇を切り出していかなければならないのではないでしょうか。
そういう‟役回り”のようなものを、やはり自身の運命として実感していく時なのかもしれません。
今週のキーワード
仮面の告白