みずがめ座
名無しから名有りへ
乞食の欲張りと商人の節制
今週のみずがめ座は、上手に目覚めることのできた朝のよう。あるいは、おのれの欲するところのものを明言していくような星回り。
鳥になって空を飛んだ夢。会社で大出世した夢。好きな人と結ばれた夢。
人は日々さまざまな夢を見ては、夢だったと認識したそばからその事実を忘れていく。
だからだろうか。私たちは、自分が指一本動かさないでいるにも関わらず、望む現実が向こうから自分のことを迎えにくるものと考えがちなところがある。
少なくとも、そういう怠慢な人々を私は少なからず知っている。
そういう人々は、本気になって求めようとしない人たちでもある。
例えば、お金持ちになりたいと夢見てはいても、ただお金を使いたくて、必要だから求めている人と、毎日毎時間何かにつけて儲けること考える人とでは、乞食の欲張りと商人の節制くらいに、まったく異なるものだ。
人はみな、おのれの欲するところのものを得ていくが、あなたが欲しているのは、儚いけれど美しい夢か、それとも本気で手に入れようと努力できる現実か。そのいずれかの判別が、今週の鍵となっていくかもしれない。
<私>の叫び
カリブ海諸国出身の詩人、デレック・ウォルコットの残した「名前」という詩があります。
そこでは、名もなき島の子として、海とともに始まり、海とともに生きていた<私>が、海面へと浮上してこの世界に生まれ出ようとしているまさにその瞬間が謳われています。
「私という種族は海の始まりとともにはじまった
そこには名前もなく、地平線もなかった
ただ舌の裏側の小さな小石だけがあり
星に記された異なった位置だけがあった
(……)
岩影から海の鷲が叫ぶ
あのミサゴの叫びのようにして
私の種族は始まったのだ
あの恐ろしい母音とともに
あのI(わたし)という!」
(『デレック・ウォルコット詩集』)
今週のキーワード
名前