みずがめ座
沈黙と言葉
アミエルの日記
今週のみずがめ座は、日記を書くことによって自身の孤独と姿勢のよさを取り戻していくような星回り。あるいは、沈黙のなかに言葉を浮かべていくこと。
アミエルという人がいた。19世紀を生き、死後その『内面の日記』によって世界的に有名になったスイスの思想家である。
彼は少年の頃に孤児になり、生涯にわたり独身だったが、ひたすら孤独な自己の慰めに、自身の苦悩、苦しみ、悲しみ、寂しさを、三十数年ノートに書き続けた。
しかし、その膨大な日記のある個所で、アミエルは日記への批判を行っている。
「日記は怠惰の枕である。すべての問題を論じないで済むし、同じことを繰り返してもよく、内的生活のあらゆる気まぐれや迂路を歩むことも、何一つ目的を立てずにいることもできる」
これなどは「あるがまま」をはき違えて、窮地に陥ったときの一時的な痛み止めや切り抜け策くらいにしか考えていない輩にぜひとも突きつけたい一文だが、こうした自己批判を乗り越えて、アミエルは日記を通じてみずからの心と行を鎮まる境地をも経験していく。
「生きるとは日に日に治り新たになることであり、また、再び自己を見出し取り返すことである。日記は、孤独な人の打ち明け相手、慰安者、医者である」
自分自身と溶け合う
先の一文に続けて、アミエルはこう続けている。
「この毎日の独白は、祈りの一形式、精神とその原理の談話、神との対話である。これによってわれわれは、面目をすべて取り戻し、混沌から明晰へ、動揺から平静へ、散漫から自己統一へ、偶有性から恒久性へ、特殊性から調和へと立ち返るのである」
もちろん、これは長らく日記を書き続けたからこそ至れた最後の境地に違いない。
逆に言えば、日記を書き続けるという行為そのもののうちに、自らの他に頼る術がない宿命をおのずから背負っていくようになる、という効用があるのかもしれない。
その意味で今週は、沈黙とともに自分自身と溶け合っていく、意識的な睡眠のような静かな時間を過ごしていくことを心掛けていくといい。
今週のキーワード
孤独と姿勢のよさ