おうし座
役目と想像力
健やかでいるために
今週のおうし座は、「我を撃つ敵と劫暑を倶(とも)にせる」(片山桃史)という句のごとし。あるいは、ぎりぎりのところで想像力を働かせて、自分に訪れてしまったものをしっかりと受け止め、弔っていくような星回り。
作者は、日中戦争の最前線で戦っていた人で、最期は昭和19年にニューギニアで戦死しています。掲句もそうした自身の経験に基づいて詠まれたもの。
物陰に隠れて狙撃してくる敵の兵士も、自分と同じく暑さに悩まされているはずだ、と感じている。
互いの命を奪いあうような戦場の最中にありつつも、どこかで敵も自分も過酷な運命に振りまされている同じ人間なのだという、置かれた現状を突き放した地平に立った瞬間が確かにあったのでしょう。
「劫」は、古代インドの宇宙観において、1つの宇宙が誕生してから消滅するまでの期間を表し、そこから転じて「劫暑」とは、「きわめて」「ひどく」暑い夏の盛りを表します。
果たして、本当の意味で自分を脅かしているのは、目の前の敵なのだろうか、それとも別の何かだろうか―。こうした問いは、どこかで今のおうし座のあなたにも通底していくものであるはず。
16日(金)におうし座から数えて「役割」と「使命」を意味する10番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週は、やらねばならぬことを前にして、どこまで生きた想像力を失わずにいられるかが問われていくでしょう。
祭りと弔い
ここで金子みすゞの「大漁」という短い童謡を引用しておきたいと思います。
「朝焼小焼だ 大漁だ。
大羽鰮(おおばいわし)の 大漁だ。
浜はまつりの ようだけど
海のなかでは 何万の
鰮(いわし)のとむらい するだろう。」
「祭り」と「弔い」がここでは表裏になっており、大漁に大喜びしていのちをつなぐ人間の裏には、父や母や仲間を喰らい殺されたイワシ達の姿があることが示されています。
逆に言えば、人間からしたら災害に思える現象も、自然からすればお祭りなのかもしれません。
そしてこれは個人の人生でも同じこと。幸せがくればおおいに祭るように、不幸せがあればきちんとそれを弔うこと。
さっさと忘れたいと次の刺激に向かったり、おざなりにすることなく、今週は自分や人生から失われたもの、失われつつあるものを「弔う」ことを意識して過ごしてみるといいかもしれません。
今週のキーワード
脱・人間中心主義