さそり座
誰かにとっての「あなた」になっていく
泣きながら生きる
さそり座にとって「自己肯定感」を司る木星が「メンテナンス」を意味する6番目のおひつじ座を運行していく2023年前半は、2011年半ばからの約12年間を過ごしてきた古いサイクルの最後にあたり、これまでどこかで頼りにし、その言葉や考えに従ってきた理想や夢や偶像を始末していく「清算」の時期。
なんとなく重たく感じられるようになってきた荷物や、居心地の悪い関わりはもちろん、ちょっとしたきな臭さや悪寒、苦みや酸っぱさなど、できるだけ視覚以外の全身の感覚を使って、ここぞとばかりにあなたのQOL(人生の質)のボトルネックとなっているモノをお祓いしていきましょう。これまではなんなく適応し、乗っかってきた価値基準やストーリーさえも、時には力づくで引きずり落としていくことも必要になっていくはず。
そして木星が「再浮上」を意味する7番目のおうし座へと入っていく2023年5月17日以降は、表面から見ているだけではうかがい知れない、より複雑な感情が解消されていくような「情念(パトス)の解放」の時期へ。
若い頃は誰しも苦しみも涙も、自分の人生には必要ないと思いがちですが、この時期はどうしたって押さえきれない切なる気持ちがこみあげてきやすいかも知れません。しかし、それはあなたが人間らしさを失わずにいられたことの何よりの証しに他ならず、そうであればこそ、そのひとつひとつの溜息には真言が宿り、ひとつひとつの涙には光が宿っていくはず。泣いて悲しんでもいいのだと、ただ理由もなく生きていてもいいのだと、この時期はよくよく自分に言い聞かせていくべし。
2023年上半期:さそり座の各月の運勢
1月「“外”からの振り返り」
1月19日を前後して、さそり座の守護星で「変容」を司る冥王星と「活性化」の太陽が重なりあい、混ざりあっていきます。冥王星は日常生活の中ではめったに働くことはありませんが、いったん働き始めると後戻りできない不可逆的な変更をあなたに余儀なくしてしまうところがあり、ここではそうした決定的な心変わりやその兆しが暗示されています。
それは言い換えれば、これまで自分が生きてきた世界をいったん“外”から見つめ直すための通過儀礼を迎えていくのだとも言えるかもしれません。冥王星は、社会構造の枠外にあたる領域ではじめて作用していくので、このタイミングに職場や自宅から離れたところに行ってみるか、瞑想をするのも効果的でしょう。
2月「野性の獣のごとく」
2月22日頃には、さそり座の守護星でふたご座にある火星と、みずがめ座の水星とが自然と互いを強めあっていきます(120度)。固定サインと柔軟サインとの組み合わせでは、得てして既存の能力や持ち物がグレードアップしていきやすく、この場合は固定サインは水星側なので、モノの見方や発する言葉(水星)がいつもだったらそこまでしないような積極的な行動(火星)を伴うことで、説得力や鋭さが増していきやすいはず。
あるいは、いろいろなものを見てみたいという気まぐれな行動が、結果的にあなたの知見を広げ、世界観を深めていくような展開へと結びついていくかも知れません。いずれにせよ、この時期はあなたの動きが野性の獣のごとく大胆かつスピード感あるものになっていくでしょう。
3月「心から安心できる居場所を求めて」
3月24日には「集合的こだわり」を表す冥王星が2008年以来、約15年ぶりにやぎ座からみずがめ座へと星座を移動させます。これはさそり座の人たちにとって、どうしたら人のこころや物事の核心をつくようなことを発していくことができるのか、またいかに自分の能力や才能を伸ばしデキる人になれるのかといったことに不思議とこだわってきた時期が終わり、どうしたらもっと自分の心の支えになってくれるような居場所や、活動のベースとなる拠点をつくっていけるのかということに執念を燃やしていくようになることを示しています。
自然と、純粋な個人としてより、コミュニティや集団生活で動いていくことの方に重心が傾いていきやすいはず。
4月「“いき”であるということ」
4月11日に前後して、さそり座の守護星で「闇の感情」を司る冥王星と、「親和力」の金星が自然と歩調を一致させていきます(120度)。これは、例えるなら媚態と諦めの結合としての「いき」の配置と言えるでしょう。すなわち、他者と結びつきたいという熱情に突き動かされつつも、同時に、男は思うようにならないとか、惚れあっていても必ずしも幸せになるとは限らないといった皮膚感覚での実感も強く抱くことで、大事な相手との関係性さえ大胆にカッコに入れて、大いなる運命を受け入れていこうとする潔さを発揮していく、みたいな。
確かに、人は死んでいくときは必ずひとりであり、それは底抜けのさびしさを噛みしめる自由の感覚であるとも言えるかも知れません。ここでは、そんな心境の変化をできるだけありのままに見守っていきたいところです。
5月「自分にとっての確固たる価値を見定める」
5月17日に前後して、「欲張りポイント」の木星がおひつじ座からおうし座へと移っていきます。自分から数えて7番目の星座は「パートナーシップ」や「専門性固め」を表し、ここからの約1年間は、本当の意味であなたの価値をわかってくれるパートナーであったり、それなりの相手が反応するだけの自分なりの世界観や価値観をいかに確立し、打ち出していけるかといったことにあなたの意欲は向かっていきやすいはず。
とはいえ、例えばもし今現に特定のパートナーがいなくても、いきなり恋人探しを始めるより、まずは自分が手に入れたい確固たる価値とは何なのかをよくよく自問するところからはじめていくべし。
6月「007の空飛ぶクルマ」
6月26日に前後して、さそり座の守護星で「行動力」を司る火星に、「自由と反抗」の天王星が思いきりぶつかってきます(90度)。これは007シリーズに登場する「空飛ぶクルマ」のようなものを想像してもらうと分かりやすいかも知れません。
地上を走行していたクルマが、ある地点からフッと浮かんで飛行モードへと切り替わっていく。当然、追っ手にも渋滞にも引っかからないし、面倒な手続きを踏んで長い行列に並ぶなんてこともしません。正面から行ってもだめなら、からめ手から、裏口から、手段を鷹揚に切り替えていくし、これまで従ってきたルールもあっさり破る。ここではそうして、自分が案外自由に動けるのだという感覚をふいに取り戻していくのです。
2023年上半期:さそり座の「道標になる本」
茨木のり子『茨木のり子集 言の葉1』(ちくま文庫、2010)
茨木のり子には「汲む―Y・Yに―」という詩作品があります。全文を掲載するのはさすがに気が引けるので、以下にその一部を引用しておきます。
大人になるというのは
すれっからしになることだと
思い込んでいた少女の頃
立居振舞の美しい
発音の正確な
素敵な女のひとと会いました
その素敵なひとは、なにげない風に、初々しさが大切なの、と言い、人の「堕落」について語り、それを隠そうとしても隠せなかった自分の体験を語る。そこで「私」が悟ったのは次のようことでした。
大人になってもどぎまぎしたっていいんだな
ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
失語症 なめらかでないしぐさ
子供の悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣のような感受性
それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
そうして語りがだんだん熱を帯びていった先で、「私」はこう結ぶのです。
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……
確かにここには、詩人によって研ぎ澄まされた真実がありますし、それは他ならぬ今期のさそり座にも、力を貸してくれる言葉であるように思います。
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