うお座
穴の奥深くへ落ちていく
夢から出たまこと
うお座にとって「拡大発展」の木星が「自己価値」を意味する2番目のおひつじ座に入っていく2023年前半は、言わば役者として「舞台上に上がっていく」時期へ。
シェイクスピアの『テンペスト』の中で魔術師プロスペローが言うように、もし「われらは夢と同じ素材でできている」のだとすれば、私たちの人生もまた誰かに夢見られ、その口にのぼり、その意味や兆しを解かれることで、すなわち「夢の民主化」を果たすことではじめてその真価を発揮していくのかも知れません。少なくとも、この時期は“自分が思う自分”以上に、他者の目や口によって描き出される自分を演じていくなかで、自分でも気付いていなかった価値や魅力を再発見していくことになるはず。
うまく行けば、当たり役に当たった俳優のごとく、あなたは“舞台”を通して大きな変貌を遂げていくことができるでしょう。逆に、与えられた役柄や配置を無視して独りよがりな演技に終始したり、ここぞという場面で舞台袖に隠れてしまったりすれば、失望や批判の声も大きくなってしまうので気を付けること。
さらに木星が「発話」を意味する3番目のおうし座に移る2023年5月17日以降には「正夢にしていく」時期へ。ここでは自分で受信したり他人から受けとったりして心動かされた夢、すなわちある種のビジョンや思いつきを人の目に触れないところへただしまってしまうのでなく、さまざまな場所で積極的に語ったり、書きえる媒体に書いていくことがテーマとなっていくでしょう。
夢ほど本人以外の他者に関係のない話はないと考えがちな現代人と違って、中世までの日本社会では、夢は語られることで同時代に生きるすべての者の夢となるということが頻繁に起きていましたが、まさにこの時期のうお座は縁あって受信した夢をどこまで正夢化していくことができるかどうかが問われていくのだと言えます。
2023年上半期:うお座の各月の運勢
1月「コズミック・アトラクタ」
1月13日に前後して、うお座の守護星で「境界線の消失」を促す海王星と、「主導権を握る」太陽とがリズミカルに反応しあっていきます(60度)。この配置は、みるみるまに植物が美しい花を咲かせていくのに似ています。
現代の哲学者のコッチャは、花とは植物において知覚と吸収を同時にこなすと同時に、自分自身に変更を加えることで、元の形状では達成し得ないような他の個体とのあらゆる出会いや結合を実現する「コズミック・アトラクタ(宇宙的な誘引剤)」の役割を担っているのだと述べていましたが、この時期のうお座もまた、周辺世界に循環と実りをもたらすべく、そんな“惹きつけ役”を果たしていきやすいでしょう。
2月「コレクションとの心中願望」
2月15日に前後して、うお座の守護星で「バイブレーション」の海王星と「趣味趣向」の金星とが重なりあい、混ざりあっていきます。この配置は、例えばレコードとCDなどのコレクションを、四面の壁を覆うようにうず高く積み上げた仕事場兼に住んでいる人の部屋の光景をイメージしてみると分かりやすいかも知れません。
床はすでにコレクションの重みで傾きかけており、日々増え続けていくコレクションの山は、ちょっとした揺らぎでいつ雪崩を起こして倒壊してもおかしくない。けれど、この人は引越しをするつもりもなければ、今の暮らしを改めるつもりもないでしょう。むしろコレクションの放つバイブスに埋もれ、一体化していくことこそ本望であり、そうしたどこか狂気じみた数寄者ぶりは、どこかこの時期のうお座にも通底するものがあるはずです。
3月「見向きもされていないものにこそ目を向けていく」
3月24日には「集合的こだわり」を表す冥王星が2008年以来、約15年ぶりにやぎ座からみずがめ座へと星座を移動させます。
これはうお座の人たちにとって、既存の慣習やシステムに異議申し立てを行ったり、人脈づくりや情報網を構築していくことに不思議なほどこだわったりしてきた時期が終わって、もっと目に見えないつながりを感じたり、その過程で魂の癒やしを経験したり、誰も目を向けないささやかなものにこそ意識を向けていったりすることに執念を燃やしていく方向性を切り替えていくことを示しています。より偶然性のきいたところで、助けたり助けられたり、それが高じて神仏の世界に深入りしていく機会も増えていくかも知れません。
4月「本気の家族団らん計画」
4月15日に前後して、前月からうお座を運行し始めた「制限」の土星と、「快楽」の金星とが激しくぶつかりあっていきます。この配置は例えるなら、テレビ視聴もスマホ持ち込みも禁止の居間(コタツあり)での家族団らん計画と言ってもいいでしょう。
冷淡さや無関心などとは無縁の真の「心のつながり」をつくっていきたいのなら、あれもこれもと関心や興味を分散させすぎたり、視覚に頼った瞬発的な会話や返答に終始したりするのではなく、目の前の相手の生きた実感を触覚的になぞったり、言語化しにくい本人の空気感や事情を嗅覚や聴覚、熱感覚などあらゆる感覚をつかって感じとっていく必要があるはず。この時期は、そんな計画に臨んでいくようなつもりで過ごしてみるといいでしょう。
5月「微妙な味覚のグラデーションを識別していくこと」
5月17日頃には、「欲張りポイント」を司る木星がおひつじ座からおうし座へと移っていきます。自分から数えて3番目の星座は「情報の受発信」や「学習/勉強」を表すため、ここからの約1年間は、いろんな相手と交流を結んだり、新たな勉強を始めたり、日常的に出し入れしていく情報量が格段に増えていきやすいでしょう。
特に人間関係に関しては、言葉を通して相手の感性や価値観を確かめながら、じっくりと味わえる関係性を築いていくことがテーマとなっていきそうです。そこでの経験を微妙な味覚のグラデーションに置き換えて言語化してみるのもおすすめです。
6月「創造的なルール運用を」
6月29日頃には、うお座を運行している「ルールを課す」土星と、「創造性の発揮」の太陽とが自然と一致していくでしょう(120度)。この配置は、俳句であれ日本舞踊であれ、何らかの文化的コードとしての「型」をインストールしていくイメージ。
人は集団になると、不意に誰かに巻き込まれてしまったり、逆に誰かを巻き込んでしまったり、といったその場の“ノリ”に依存する形で高揚を作り出していくようになり、それはともすると忖度や表層的なコミュニケーションの温床となりがちです。ここではそうした「月並みさ」を避けたりしりぞけたりするためにある種のルールを導入していったり、型をつかうことでコミュニケーションをより洗練したものにしていったりすることがテーマとなっていくでしょう。
2023年上半期:うお座の「道標になる本」
後藤繁雄『独特老人』(ちくま文庫、2015)
インタビュー集である本書の目次には、水木しげるや淀川長治、堀田善衛、大野一雄など錚々たる顔ぶれが並んでいまが、編集者でアートディレクターの後藤繁雄は、この本に登場した人は「『一流』とかではなく『破格』である」と述べており、例えば、俳人の永田耕衣に対して行った昭和が終わる年のインタビューでは次のようなことが語られていました。
人生ってやはり出会いだと、出会いは絶景だということを私は言っている。あの石川五右衛門が「ああ絶景かな」と言ったろ。あの絶景だ。これ以上立派なものはないと。出会いは絶景だと言ったって、誰と会っても絶景だとは言えない。だけど、今日あんたと会うたのは絶景かも知れん。そういう出会いによって人間は個別に、自己の環境を広げていって、その環境を広げるだけじゃなくって深めていって、その人の影響というかな、仏教でいう「善縁」というものを得る。つまり、そういう感覚が絶景感覚よね。出会いの絶景。(……)自然が絶景であるとも言えるけれども、それよりも人間の方が絶景だと。
これは自分の力だけではとても生きていくことはできないという実感と、ただ生きているだけではなくて、何かそこに手応えのある感じが重なって、立体的なものに突き当たっていく。そこで立ち現れてきたホログラムを「絶景」と呼んだのかも知れません。
永田が宝物のように大切をしていたそういう感覚は、今期のうお座にとっても大きな指針となっていくのではないでしょうか。
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