てんびん座
全身全霊で応答していくということ
のんびりプカプカ浮いていく
てんびん座にとって「肯定と発展」を司る木星が「破れ」を意味する7番目のおひつじ座を運行していく2023年前半期は、自分ひとりの力量ではどうしようもないような奔流が押し寄せて人生がゼロに戻ったり、再出発を促されていくような「リセット」の時期。
仮にここで一歩進んで二歩も三歩も下がるようなことがあったとしても、それに無理に抗ったり、すぐさま取り返そうとするのでなく、むしろそれを機に流れに身を任せるべく、体から余計な力を抜き、こわばりを解いていくくらいのつもりでちょうどいいでしょう。そうしてただプカプカと浮かんでいることを楽しんでいるうちに、意外なところからスッと人生にはずみがついたり、渡りに船な出来事が起きていくかも知れません。
この世に生まれ落ちること自体が、こころにゆがみやこわばりをもたらすのだとすれば、ここでは存在しているうちに、いつしか鉄のかたまりのようになってしまった<私>を、改めて風や息吹、ゆらめきのようなものへとほぐして、直線的な時間の背後にあるより大きな循環にのれるよう押しやっていくことがテーマになっているのだと言えます。
もしそれでも世界が続いていて、うまいことどこかの岸辺に流れ着いたなら、5月17日以降の2023年後半期は、少なからず「白紙に地図を描いていく」時期に入っていくはず。すなわち、右に森林地帯があったなら狩猟採集を試み、左に川や湖があったなら釣り糸を垂れ、あいだにほどよく土地が開けていれば畑で作物を育ててみるなど、少しずつ生活の余白を埋めたり、スケジュールの埋め方を変えてみるといいでしょう。ただし、この時期はまだ冬眠から醒めたばかりの動物ばりに心身に無理がきかないことが多いので、いきなり頑張りすぎないよう注意するべし。
2023年上半期:てんびん座の各月の運勢
1月「尼寺の午後のやすらぎ」
1月4日に前後して、てんびん座の守護星で「依存すること」を表す金星と、「援助と希望」の木星がタッグを組んで協力しあっていきます(60度)。尼寺の午後のやすらぎのような配置。
大人しく身近なところで楽しんで、それに満足していくことさえできれば、歯を食いしばって大それたことにチャレンジしたり、誰もが羨むような暮らしをする必要などまったくないのだという気分に自然と浸っていきやすいでしょう。陽の当たる窓際にテーブルと椅子を置いて、気の置けない友人とのんびりお茶をするような時間を大切に。
2月「湯けむりに誘われて」
2月15日頃には、てんびん座の守護星で「感受性」を司る金星と、「脱力」を促す海王星とが重なりあい、混ざりあっていきます。排他性ないし独り占め、過剰なプライド、嫉妬、力や富への貪欲さ、などなど。ここではそうした気の重くなるような心のお荷物をお湯に溶かして、じゃぶじゃぶと洗い流していきましょう。実際に温泉に足をのばしてみるのもいいかも知れません。知らず知らずのうちに凝り固まってきた緊張感がふやふやになるまで、いっそしばらくお暇いただいてもしまうのもアリなのでは?
3月「ロマンティックが止まらない」
3月24日には「集合的こだわり」を表す冥王星が2008年以来、約15年ぶりにやぎ座からみずがめ座へと星座を移動させます。これはてんびん座の人たちにとって、どうしたら親から受けた影響を認識しつつ、それを越えられるか、そして自分のベースとなる活動の場や、心の支えになってくれる居場所をつくっていけるかにこだわってきた時期が終わり、文章であれ映像であれ、もっとささやかな手段であれ、いかに個性の発揮や表現活動を通じて、みずからのエネルギーを人に分け与えていけるかということにこだわりが移っていくことを示しています。
純粋にわくわくする気持ちや童心を取り戻すだけにとどまらず、それを全開にして活動に転じていきたいところです。
4月「限界状況に触れていく」
4月14日頃には、てんびん座の守護星で「受容する」金星に対して、「固める」土星が釘を刺してきます(90度)。年末からここまで、イージーな流れに対して受け身モードできたあなたに、「そろそろ行き先や時間制限を意識して、どこへ流れ着いていくのか考えてごらん」とアラートをかけてくるような配置。
カール・ヤスパースいわく、人は普段は気晴らしにふけることで、実はすでに「自己の死」などの限界状況のうちにあることを忘れてしまっている一方、孤独や絶望などあからさまな事態に直面したときこそ、人生の有限性に目覚めるチャンスなのだとか。「実存」なんて言われると何のことやらですが、「限界状況」という言葉には、その響きだけでこの時期特にピンとくるところがあるはず。
5月「あなたに愛があるならば」
5月17日に前後して、「欲張りポイント」の木星がおひつじ座からおうし座へと移っていきます。自分から数えて8番目の星座は「絆」や「弱さの開示」を表し、ここからの約1年間は、これまでのあなたなら抵抗感を覚えるくらい、自分の資産や時間を誰かに与えたり、与えてもらったりといった深い関わりに自然とコミットしていきやすいはず。
その際、裏切りや失恋など、何かを失うことを過度に恐れて先に与えてもらおうとするのでなく、ここぞという時ほどむしろ自分から先に相手に与えていくことを大切にするべし。
6月「生命力の爆発だ!」
6月12日頃には、てんびん座の守護星で「美意識」を司る金星と、「拡大と発展」の木星が激しくぶつかり合っていきます(90度)。ここでは質素な暮らしや倹約の美徳の大切さも十分に知りつつも、だからこそこれだけは求めずにはいられないという快楽や喜びが一気に爆発していきやすいでしょう。
例えるなら、精進料理でしばらく過ごしたあとに思いきりジャンクフードを食べたくなる時のような気分。あるいは、ほどほどさを大きく逸脱して、見るものすべてを水玉で覆ってしまう草間彌生のアートなど。ただそれはそれで、死から生へと転じる際に増幅される、豊かな生命力の現われなのかも知れません。
2023年上半期:てんびん座の「道標になる本」
ヴァージニア・ウルフ、御輿哲也訳『灯台へ』(岩波文庫、2004)
ウルフは彼女の代表作である長編小説『灯台へ』のなかで、母にして妻であるひとりの女性が過ごす、ある一日の終わりについて、次のように綴っています。
ようやく、彼女は誰のことも心配しなくてよかった。彼女自身に、自分ひとりになれた。これこそが自分に必要だとつねづね思っていたこと、物思いにふけること。いやなにかを思うことでさえない。静かに、ひとりでいること。あらゆる人びとも、することことも、めざわりなもの、きらびやかなもの、にぎやかなものも霧のように消えた。そして、厳粛な気持ちで自分自身へ縮みこんで、他人にはみえない、楔形をした暗闇の芯になっていった。背を伸ばして座ったまま編み物をしながら、自分をそんなふうに感じていた。そして、この係累を振り払った自分というものは、どんな奇妙な冒険にも自在に飛び出していった。束の間、人生のあれこれがどこかへみえなくなり、経験が無限の可能性をもっていると思える瞬間。……その下には果てしなく深い、一面の暗闇が広がっている。でも、わたしたちはときどき水面に浮き上がる。それがわたしの姿としてみられるのだ。彼女には、その地平線が無限につづいているようにみえた。
確かに、自分というものはただ一つの人格、ただ一つの精神に縛りつけられている訳ではなく、彼女が描き出したように、わずかな時間、かすかな揺らぎでもどこかへ流れ出していってしまうもの。今期のてんびん座もまた、そうした自我が溶解するような感覚を通して、ただひとり迷子になっていくことをどこかで欲しているのではないでしょうか。
まーささんが占うてんびん座の上半期の恋愛運はこちら
SUGARさんが占うてんびん座の今週の運勢はこちら
星乃せいこさんが占うてんびん座の今月の運勢グラフはこちら