しし座
内的必然性をととのえる
誓いとそれに伴う責務
しし座にとって「思想信条」を司る木星が「神殿」を意味する9番目のおひつじ座へ入っていく2023年前半期は、さながら古代の布告者がそうしたように、個人的な願いを自身と周囲の利益へと換えるべく「誓いを立てていく」時期なのだと言えます。
例えば古典期アテナイでは、戦争であれ裁判であれ農事であれ何かしら事を始めるにあたって、まず民会の集まりで清めの犠牲に豚を捧げ、薫香を焚き、祈りの言葉を捧げることから始められました。それは当時のアテナイ人たちが神頼みの怠け者だったという訳ではなく、彼らの指導者デモステネスの言によれば、「当人が怠け者なら、自分のために何かしてほしいと友たちに頼むことなどできない相談であり、まして神々にはできない」。これは今期のしし座の人たちにも同じことが言えるはず。
すなわち、ここで言う「誓いを立てる」とは、個人の人生において何らかの特別な助力が必要と思われる事柄や守らなければならない禁止事項などの包括的なリストを作成し、それを立場を同じくする身近な者同士で公開・共有していく能動的行為に他ならないのです。
そして、木星が「公的立場」を意味する10番目のおうし座へと移る5月17日以降の後半期に入ると、いよいよ「新たなる務め」のタイミングへ。ここでは神々への誓いの遵守に応じた結果がもたらされ、勝ち負けであれ豊作不作であれ、何らかの社会的な立場の変化・変更が起きて、新たな方向性が示されていきやすいでしょう。
これは責任の増大をも意味するため、現状の自分に欠けているものは何か、何がどれだけリスクとなるのか、セーフとアウトの線引きはどこかをしっかり把握して、特に経済活動に関する「しぶとさ」や「老獪さ」を発揮していけるかが問われていくように思います。
2023年上半期:しし座の各月の運勢
1月「肝を据える」
1月18日に前後して、しし座の守護星で「生きる力」の太陽と、「崖っぷち」の冥王星とが重なり合い、混ざり合っていきます。
何不自由なく生きている人であれば、この冥王星の影響はほとんど実感がないか、怖気づいてしまうかも知れません。しかし、深い挫折や人生のどん底を経験したことのある人ならば、かえって肝が据わってくるはず。それはそれなりの金額の借金を負ったり、融資を受けたりする感覚と似ていて、扱うパワーや動かせる現実が大きくなる分、その使い方を間違えたり、放棄してしまった時にこうむる被害もケタ外れなものになっていきます。
肛門をしっかり締めて、腹を決めること。うまく行けば、これを機にあなたから信念のブレや中途半端さがなくなっていくでしょう。
2月「宇宙船になっていく」
2月4日に前後して、しし座の守護星で「創造性」を司る太陽に対して、「反骨精神」の天王星から激しいツッコミが入っていきます(90度)。これは例えるなら「まだ重力に黙って従って疲弊してるの?」という声を聞いて、突如として地上の重力をほとんど無視したUFOのような動きをする宇宙人のようなイメージの配置です。
つまり、別にいちいち地球の常識に辻褄合わせをした生き方をしなくてもいいんだということを思い出して、どんな批判や反発、嫌悪が飛んでこようと、宇宙船のように飄然としていくような態度を取っていくのだとも言えるかも知れません。ここでは「訳が分からない動きをしていた方が面白いじゃないか」というシンプルな考え方に自然と傾いていきやすいでしょう。
3月「分かりやすくキャラ化する」
3月24日には「集合的こだわり」を表す冥王星が2008年以来、約15年ぶりにやぎ座からみずがめ座へと星座を移動させます。これはしし座の人たちにとって、一人前と言えるような完璧な人間にならなければならないし、それにはまだまだ勉強や反省を重ねなければならないといったことに不思議とこだわってきた時期が終わり、もっと分かりやすく世間に受け入れられていくことや、そのために自分の立場や専門性を分かりやすく打ち出していく必要があるということにこだわりが移っていくことを示しています。
一方で、それはどこまでは世間に見せる顔で、どこからは晒すべきではない素顔かという線引きをきっちりしていくということでもあるはずです。
4月「許すことの甘さを」
4月12日頃には、しし座の守護星で「明るく笑える力」の太陽と「援助や希望」を司る木星とが重なりあい、混じりあっていきます。
しし座の人たちというのはとかく独りやせ我慢をしがちですが(全然大丈夫じゃない時でさえ「全然大丈夫」と言う)、ここではそうした無理や苦労をいちいち伴わなくても、「誰かと共にいることや他者の協力によってもたらされる豊かさに開かれていいんだ」と自然にゆるんでいきやすいでしょう。苦労の酸っぱさよりも許すことの甘さを、ここでは選んでみるべし。
5月「平凡さに囲われる」
5月17日に前後して、「拡大拡張」の木星がおひつじ座からおうし座へと移っていきます。自分から数えて10番目の星座は「世間との付き合い」や「人気」を表し、ここからの約1年間は何かと表舞台に引き揚げられたり、何かを代表するような立場に立たされることが増えていきやすいでしょう。
それは平凡さに囲われるということでもあり、しし座特有の鋭い個性はいくらか失われるかも知れませんが、そうした風雪に耐えていくこともまた、プロの仕事人としてひとつの重要な通過儀礼となっていくでしょう。
6月「無能の人」
6月19日に前後して、しし座の守護星で「意識的自我」の太陽に対して「集合的無意識」の海王星が死角からそっと横やりを入れていきます。これは言わば、拍子抜けするようなボケをかまされたり、かましたりする配置と言っていいでしょう。
実際、ここでは一時的に偏差値がありえないくらい低くなると思っておくとちょうどいいかも。大きなプレッシャーから解放されたり、人から助けられたりする時というのは、大抵そういうものだったりしますし、つまらないプライドなどはいっそここで捨てていくべし。
2023年上半期:しし座の「道標になる本」
與那覇潤『歴史が終わるまえに』(亜紀書房、2019)
歴史学者の與那覇潤と批評家の福嶋亮大は、「すべては「崩壊」から始まった―日本人の「美と国民性」の源流」と題された対談において、日本の文化や文学というのは文明崩壊をきっかけに生まれてきたのだとして、万葉集を例に次のように語っています。
(與那覇)「たとえば中大兄皇子(天智天皇)が遷都した大津宮も、壬申の乱(六七二年)という壮絶な内乱の結果、五年しか使われない。その時代を生きた柿本人麻呂(六四五頃~七一〇頃)は、次々に作っては棄てられる都に、敗者の怨念が残ることを怖れた。それを慰め、鎮魂するための「文学」を作ろうとした人麻呂の姿に、福嶋さんは日本文化の原型を見るわけですね。
(福嶋)「『万葉集』と言うと、すごく素朴な世界が書かれているというふうに思われがちですが、本当はそうじゃない。かつて都市文明があったが、それは壊れてしまった―人麻呂が描いているのは、そういう喪失の感覚なわけです。素朴な世界と言うよりも、むしろ「ポスト文明」なんですよね。日本文学は野蛮からではなく、むしろ首都(の崩壊)から始まっている。だから、與那覇さんもおっしゃるように、悠久の歴史を捏造しちゃダメで、むしろ文明の切断=崩壊の反復を考えないといけない。
物事を見るためのパースペクティブが完全に壊れ、何か問題が起きてもニュースのコメント欄やSNSで炎上するばかりの今の社会において、現に起きている「滅び」や「喪失」をこうして新しい「文学」を立ち上げる契機として捉えなおすという視点は非常に重要なものであるように思います。その意味で、今期のしし座もまた、今直面している現実にふさわしい言葉や、形式というものを、自身の立場に引きつけつつ考えていきたいところです。
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