みずがめ座
無用の老木にならっていく
遊歩と三叉路
みずがめ座にとって「飛躍」を司る木星が「移動」を意味する3番目のおひつじ座を運行していく2023年前半は、これまでいた環境や古くなった居場所から離れ、その周縁や外部へとなんとなく「そぞろ歩き」をしていく時期。その形は転職や移住、離婚などさまざまでしょう。
例えば、19世紀前半のパリでは、亀を連れてアーケード街を散歩することがブームとなっていたそうですが、そうした遊歩者のテンポについて、ヴァルター・ベンヤミンは「生産過程が(機械によって)加速されるとともに、そこでの退屈も生まれてくる。遊歩者は悠然とした態度を誇示することで、この生産過程に抗議する」のだと述べました。
これは、いつまでも同じことを同じ場所で繰り返し続ける今日の群衆のテンポとも見事な対照をなしているように思いますし、今期のみずがめ座もまた遊歩者となってぶらぶらしていくなかで、少しずつ日常を既存の場所からズラしてみるといいでしょう。
それから、木星が「ひとつの終わり」を意味する4番目のおうし座へと移る2023年5月17日以降になると、今度は「決断と地固め」の時期に入ります。前半期はこれまでの約9年間を振り返りつつも、そこで得た体験の意味や本質をまとめていくことも大きなテーマとなっていましたが、後半期はいよいよ自分なりの人生観や死生観をはっきり明確にさせていけるかが問われていくはず。
その際、散歩中の夜道で出くわした三叉路に対して、その場の雰囲気に流されずに自分の体調や気分にマッチした方の道を選んでいくようなさりげない感覚で、ただしどんなに世間や他者からの無関心や嫌悪を向けられたとしてもこれしかないと思えるくらい重い選択をサッと下していけるかがカギになっていくのだということを、よくよく胸に刻んでおくべし。
2023年上半期:みずがめ座の各月の運勢
1月「すすめオワコン化」
1日6日頃には、みずがめ座の守護星で「イノベーション」を司る天王星に、「活性化」の太陽が自然と影響を及ぼしていきます(120度)。この太陽はやぎ座で活動サインにあるため、ここでは遅々として進捗のなかった状況がグッと加速化していく、なんてことも起きていくはず。
特に、これまで神聖視されていたために、現に噴出している問題解決にまるで寄与していないにも関わらず残されてきた権威やシステムなどは、この時期に一気に立場が苦しくなっていきやすいでしょう。これを機にいま自分が立っているのが駆逐される側なのか、駆逐する側なのか、改めて足元を確認していくべし。
2月「レールの上を爆走せよ」
2月16日に前後して、みずがめ座で「前進する力」を司る太陽と「ガイドライン」の土星とが重なりあい、混ざりあっていきます。この配置は言わばレールの上を走る列車のイメージです。
かつてはよく「親の敷いたレールの上を歩むなんて」などドラマや漫画などで揶揄気味に用いられたこのイメージですが、ふらふらしたり無駄な回り道をしなくてすむ分だけ、目標追求に全身全力を投じていくことができるという意味で、ある程度土星側の示す“レール”を受け入れることさえできれば、太陽にとってこんなにありがたく心強い味方はいません。それが業界の慣習であれ、家庭の懐事情であれ、選べる選択肢が限られているという状況をどう生産的に活用できるかがここで問われていくでしょう。
3月「正面から世界に向きあっていく」
3月24日には「集合的こだわり」を表す冥王星が2008年以来、約15年ぶりにやぎ座からみずがめ座へと星座を移動させます。
これはみずがめ座の人たちにとって、魂の傷を癒やしたり、その家庭で思わぬ気付きや悟りを得られるか、また胸の奥深いところの琴線に触れてくるものに出会えるかといったことに不思議とこだわってきた時期が終わり、たとえ波風が起ころうとも、日の当たる場所に出ていこう、他の誰かのためでなく純粋に自分自身のために動いていこうということに執念を燃やす方向性が切り替わっていくことを示しています。目立たない場所に気配を消して佇みがちだった時代から、きちんと構えをとって世界と正面から向きあっていく時代へ、ここから移っていくのです。
4月「アグレッシブ・サッカー!」
4月30日に前後して、みずがめ座の守護星で「変革」を司る天王星と、「勇み足」的に動いていく火星とが一致団結して協力しあっていきます(60度)。これはスピードのギアを一段も二段もあげるか、ターボエンジンに点火して、一気にライバルを追い抜いていくようなぶっちぎりの配置。
サッカーに置き換えれば、肝心な攻めどころでバックパスを繰り返してチャンスをみずから潰して煮え切らない状態とは正反対の、ここぞというところでゴールに向かったプレーを怖がることなく仕掛けていったり、シンプルで無駄のないプレーでボールをつないで最短時間でゴールに迫っていく時のように、きわめてアグレッシブになっていける時です。どうせならみなをアッと言わせるようなゴールを狙っていくべし。
5月「生きがいの創出へ」
5月17日頃には、「自己肯定感」を司る木星がおひつじ座からおうし座へと移っていきます。自分から数えて4番目の星座は「居場所」や「心の支え」を表すため、ここからの約1年間は、どちらかというと内に引っ込んで、心安らかにくつろげる場を整えていったり、家庭や家族などと向きあう時間が増えていきやすいでしょう。
人はひとりきりでは生きていけないし、生きる意味も減ってしまう。だからこそ、時には自分を犠牲にしてでも身近な人のために時間と労力を費やしていくことが、大きな喜びとなっていく。ここからは、そんなことをふいに実感していきやすいかも知れません。
6月「生きたマンダラと向きあう」
6月5日に前後して、みずがめ座の守護星で「非常識な知識」を司る天王星と、「知識」を司る水星が重なりあい、混ざりあっていきます。この配置は、合理を超えた超合理の世界に自然と波長があって、精神が覚醒していきやすいでしょう。
例えば、粘菌研究者の南方熊楠は、森を「生きたマンダラ」と見なしましたが、これも草木やコケ、キノコ、粘菌、微生物などの無数の生物群が、相互に影響を及ぼしあい、関連しあいながら全体を巻き込んだ動的な統一体をつくっている様子を彼が直接感得していたがゆえでしょう。その意味で、ここではできるだけ通常の言語的知性が通用しないようなものに直面していきたいところです。
2023年上半期:みずがめ座の「道標になる本」
マーク・フィッシャー、セバスチャン・ブロイ+河南瑠莉訳『資本主義リアリズム』(堀之内出版、2018)
いま私たちは万人が幻想を生きたがる時代に生きているのだと言えますが、イギリスの批評家マーク・フィッシャーは、こうしたグローバル資本主義にすっかり包み込まれた現代人が陥っている事態を「再帰的無能感」と名付けました。
それは、理不尽な状況に対して自分たちにはもはや何も為す術がないのだと感傷モードに浸ることを意味するのですが、フィッシャーは厄介なことにそれが「広く染みわたる雰囲気のように、文化の生産だけでなく、教育と労働の規制をも条件づけながら、思考と行動を制約する見えざる結界として」働いているのだと指摘した上で、そこから脱け出す方法について、『資本主義リアリズム』の中で次のように述べています。
過去三十年にわたって、資本主義リアリズムは教育や保険制度を含む社会のすべてがビジネスとして経営されるのがごく自然なことだという「ビジネス・オントロジー」の確立に成功してきた。(中略)社会の開放を目指す政治はつねに「自然秩序(あたりまえ)」という体裁を破壊すべきで、必然で不可避と見せられていたことをただの偶然として明かしていくと同様に、不可能と思われたことを達成可能であると見せなければならない。現時点で現実的と呼ばれるものも、かつては「不可能」と呼ばれていたことをここで思い出してみよう。
つまるところ、「この道しかない」ということが“あたりまえ”とされる現実があったとしたら、まずそこに疑問符をつけることこそが、再帰的無能感から脱け出すための出発点なのだとフィッシャーは言っているのです。
今期のみずがめ座もまた、自分がもっとも可能性を限定してしまっているのはどこなのか(例えば「この人とは離れられない」とか「この業界以外では生きていけない」とか)、というところから、今一度自分を無能感から救う道筋を探ってみるべし。
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