いて座
言葉とケジメ
いて座にとって2021年はここ10年あまりの流れにオチをつけていく区切りの年ですが、奇しくもそれに丸ごと重なる2010年代はいわばSNSの時代でした。
TwitterやFacebookなどが普及していくにつれ新しい情報流通や民衆運動が可能になっていった裏で、そういったSNSの生み出す負の効果もまた明らかになっていきました。すなわち、この10年間で言論においても、文化においても、また政治においても、裏づけのとれた蓄積に基づくきちんとした主張をするより、“わかりやすく、煽情的で、その場かぎり”の主張を繰り出したり、「炎上する」方が有効であるという風潮が幅を利かせるようになってきたのです。
それは物事を見るパースペクティブの劣化や損壊に他ならず、人々の使う言葉から暗いことや厳しいことが省略され、「小難しく悩むことなんてないよ」という快楽原則にずいぶんと流れてきてしまったことを意味しますが、2021年のいて座はまさにそうした、 なんとなく流されるように生きてきた流れにケリやオチをつけることができるかどうかが問われていくのだと言えます。
つまり、 どうしたらこれまでの風潮に抗って「別の可能性」を身をもって提示できるか、色々なことが「わけがわからない」今だからこそ、筋の通った話や強靭なストーリーを築き上げていけるかが課題となっていくということ。
今季のいて座は、そんな自分の言葉をもつことをめぐる悪戦苦闘がテーマになっていくでしょう。
2021年上半期、各月の運勢
1月「白紙部分の追加」
18日前後にはいて座の守護星である木星と、「転覆と開放」の星である天王星とが緊張感のある角度をとっていきます。これは予想外の方向への急展開を表す配置であり、感情であれ情報であれ、狭いところに押しこめていたものが漏洩し、広く散らばって開放されていきやすいでしょう。ただそれは悪いことばかりではなく、 これまで自分を含めバラバラに存在していた島宇宙が架橋されていくことで、確実にあなたの“世界”は大きく広がっていくはず。それはさながら既存の地図をよく見ると白紙部分が加わっていたというような新鮮さを伴う体験でもあるのではないでしょうか。
2月「生きた言葉の実感」
12日前後から15日にかけていて座の守護星である木星に、「楽しみ」の金星と「発話」の水星が連続的に重なっていきます。この配置は想像力の活性化であり、自分なりの物語の発見を暗示します。例えば、リラックスした子供たちに怪物がやってきたとか、前触れなく運命的な旅に出なければいけなくなったといった“神話的なおはなし”をして、途中でやめると、彼らはその続きを勝手に話し始めたりすることがありますが、この時期のいて座もちょうどそんな感じに近いと言えるかも知れません。 言葉というのは、そうして自分なりの物語と結びついていくことで、初めて生きた言葉となっていくのだということを、あなたはまざまざと実感していくことでしょう。
3月「学びとマルチ展開」
4日に「興奮と衝動」の火星がふたご座に入座し、4月23日にかに座へ抜けるまでのあいだ火星はふたご座を運行していきます。これはいて座の人たちにとって「学び」の意欲に火が着くタイミングであり、社会的な立場や建て前への意識はいったん薄れる代わりに、興味や関心を多方面に展開させていきやすいでしょう。そして、ここで大切なのは頭の中に自分なりの新たな“思考都市”を構築していく感覚。さながら、明(現在の中国)との海洋航路をみずから開拓し、交易を通してこれまでになかった様々な外国文化を日本にもたらした平清盛のように、時代の風を受けつつ自由な情報の海を駆けまわっていくべし。
4月「最高の交易を」
16日前後にはいて座の守護星である木星が、ふたご座を運行中の火星と調和的な角度(120度)をとっていきます。これは先月からの流れが最も強まっていくタイミングと言えるでしょう。ともすると、周囲からは単なる好き勝手をしているだけにも映りかねませんが、ポジティブに出れば、厳しい状況の中でもいかに自分の本質的な力を維持していくことができるかがテーマになっていく時期なのだとも言えます。 あなたの精神性や探究心を存分に発揮して、ここ最近で一番の“交易”を成功させていきましょう。
5月「腹でしか決まらないもの」
14日にいて座の守護星である木星が、いったんみずがめ座からうお座へ移ります。7月28日に再びみずがめ座に戻ってくるのですが、これはいて座にとって重要な問いかけをもたらします。それは様々な新しい情報に触れ、学びを深めたり、それで世界が広がったりといったここしばらくの流れに対し、「結局のところその行き着く先は一体どこなのか?」という仕方で迫ってくるはず。ただし、それはいくら頭で考えて答えられるものではなく、「腹が据わる」といったある程度本能が働いていくことで初めて決まってくるものでしょう。この時期は頭脳と身体、心のバランスをできる限り取り戻していくことを心がけるべし。
6月「芽生えと養育」
24日前後にはいて座の守護星である木星が、かに座を運行中の太陽と調和的な角度(120度)をとっていきます。太陽のテーマは「発展する未来をつくる」ことですが、ここではそれを強い意志で積極的ないし動物的に獲得していくというよりも、もっと植物が周囲との関わりにおいて互いを利することでその領域を少しずつ広げていくように実現していこうとするでしょう。この惑星では何万年もの昔から、太陽エネルギーを捕える緑の葉身がいわば“コスモスの靭帯”をなすことで、じつに様々な生命を育んできた訳ですが、この時期のいて座もまたそんな彼らのやり方を自分に取り入れてみるといいかも知れません。
2021年上半期、いて座が心に留めておきたい芸術家
レイモンド・チャンドラー
探偵小説作家。私立探偵フィリップ・マーロウというハードボイルド小説の歴史に燦然と輝く不滅のキャラクターを創り上げ、シリーズ6作目の『ロング・グッドバイ』で「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格がない」という忘れられないセリフを残した。ある意味ではミステリー、ある意味では純文学、それでもやっぱりエンターテインメントという、これしかないという独自の比率を確立した「チャンドラー派」の家元とも言える。訳者によって一人称やセリフががらりと変わってしまうので(先の「強くなければ」は「タフでなければ」とも訳される)、自分に合う訳を見つけるべくぜひ読み比べてみてほしい。