うお座

わたしを発酵的に仕上げていく
2021年上半期のうお座のテーマは、 「脱・右肩上がりの成長幻想」。
例えばぬか漬けや味噌、チーズ、ヨーグルト、ビール、ワインなどの発酵食品づくりというのは、果物の樹の苗を育てて実を収穫するとか、ニワトリを飼って卵を産んでもらうといったこととは違って、基本的に生産に直結していません。よくて“変化している”というだけで、実際やっていることと言えば腐敗するままに放っておくことだけだからです。
ただ、そこで働く菌が活性化していって、ある絶妙なタイミングで取り出すと、腐敗しきらずに美味になっている。文明や社会というのは、その地域ごとにこうした発酵したおいしさに転じる魔法のタイミングを味覚ではかりながら生活に組み込んできた訳ですが、それも本質的には「成長しないプロジェクト」なんです。
つまり、発酵食品づくりというのは発展・拡大とか、大量生産とか、いつまでもそのままということには無縁だということ。そして2021年のあなたもそんな発酵食品と同じで、じっと立ち尽くしながら、結果的にちょうどよくなるタイミングを待っているのだと言えます。
それが仕事であれ、人間関係であれ、あまりやりすぎてしまえば、そのまま腐敗してしまう可能性の方が高いでしょうし、危うさや脆さ、悲しさや切なさなど、 淡い何かが発酵してくるわずかな境い目のタイミングで取り出し、これしかないという絶妙な味わいの作品として仕上げていこうとする姿勢が求められてくるはず。
あるいはそれは、個人としての努力の限界やキャパの限界を見極めていくということでもあるかもしれません。いずれにせよ、 今季のうお座は「無限の可能性」などといった言葉や発想にどこで見切りをつけて、自分自身や人生の価値を仕上げていけるかが問われていくでしょう。
2021年上半期、各月の運勢
1月「ポルコとジーナ」
24日前後には、うお座の守護星である海王星と、「調和的な結びつき」の金星が生産的な角度(60度)をとっていきます。これは愛情と友情のはざまにあるような、あるいは、恋人と友人の中間に位置するような相手や関係性こそが鍵となって、あなたが没入すべき個人的神話が生き生きと動き出していく配置。例えば、『紅の豚』のポルコとジーナはちょうどそんな関係の一例と言えるかもしれません。 社会が与える名称や型にはまった枠を超えて、純粋に人と人として信用し合える関わり方を模索していきましょう。
2月「辺境にこそ精神は宿る」
26日前後にはうお座を運行中の太陽と、「逸脱と独立」の天王星が生産的な角度(60度)をとっていきます。これは共同体の外に締め出された人が、周辺や辺境で新しい共同体を形成しはじめるという配置。有史以来、人間社会というものは常にその内部の格差を保存しつつそこで苦しむ人びとを搾取することで文化を営んできましたが、例えば宗教というのはそうした人間社会の辺境で生きる人々の救済のために編み出され、それこそを本願としてきました。この時期のあなたは 改めて自身をそうした“辺境”に宿る精神的現象として捉えなおしてみるといいでしょう。
3月「おとずれるもう一つの現実」
11日前後にはうお座を運行中の太陽が、うお座の守護星であり「無意識的な情報プール」の海王星と重なっていきます。これはひろがる海原を自在におよぐイルカであったり、そのイルカ同士が水中にダイレクトに響く交信の層でなされる全身に貫通するようなコミュニケーションをしているところをイメージしてみるといいかもしれません。音となって、目に見えない相手がまぢかに訪れる。そんな出来事をさして、古代人は「オトヅレ(音連れ)」といった訳ですが、あなたの元には一体どんな相手が訪れるのでしょうか。 この時期は全身をイルカに変えて、よく耳を澄ませていくといいでしょう。
4月「くしゃみをしたランチさん」
9日前後にはうお座の守護星である海王星と、「サバイバル力」の火星が緊張感のある角度(90度)をとっていきます。火星というのは基本的に勢いよく走り続けていくためにエンジンをフル稼働することを求めますが、あなたの場合はその本質に「夢見」の海王星があるので、この配置はさながら家の垣根を超えて戸外まで出歩いてしまうようなものと言えます。でも、だからこそ 自分でも想定外の場所に行き着いたり、予期していなかった行動に出ることで新しい扉が開いたりといったことも起きてくる。この時期は、『ドラゴンボール』のランチさんのような別人格の自分を楽しんでいくといいでしょう。
5月「余計な力を抜いていこう」
22日前後にはうお座の守護星である海王星と、「呼吸と自己意識」の水星が緊張感のある角度(90度)をとっていきます。呼吸というのは半ば無意識的、半ば意識的に行っている活動ですが、深くて速い呼吸を一定のあいだ続けると、日常よりも深い変性意識状態に入って誕生時や子供時代の記憶、感情などが浮上してくることがあります。この配置は言わばそうした 特殊な呼吸や変性意識状態に入りやすい配置で、自己発見や癒し体験を伴いやすいでしょう。場合によっては、スーッと自分自身が別物に入れ替わっていくような感覚すら覚えるかも知れませんが、淡々と自分を観察していくべし。
6月「さあて、うかうかするぞーっ」
14日前後にはうお座の守護星である海王星と、「創造力」の太陽が緊張感のある角度(90度)をとっていきます。この配置は、逆境や何も起きない現実にさりげなく対していく禅僧のような超越的なアプローチを表します。例えば、自然は定期的に冬を迎えますが、古来より人間はそれを生活の中で編み出した知恵によって冬を乗り越え、春を迎えてきました。ただ、それをここでは「我慢」や「必死の努力」によって実現するのではなく、神様だとか仏様だとか、何でもいいんですが、自分を「虚」の世界においていくことで乗り越えていこうとする訳です。つまり、 特別何にもしてないように見えて、気が付くと現実の方が変わっているといったような、そんな“うかつ”な自分を目指していきたいところです。
2021年上半期、うお座が心に留めておきたい芸術家
鴨長明(かものちょうめい)
平安時代末期から鎌倉時代前期にかけての歌人・随筆家、琴や琵琶など名手としても知られた。「ゆく川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず」の書き出しで知られる日本の名随筆の筆頭にあげられる『方丈記』の著者であり、無常観をつきつめた隠遁者のイメージが強いが、その諦念の内奥にあったのはどうしようもないほどに強烈だった政治的関心であり、その背景には、出世のためには気狂いにならなければ生きられなかった、当時の世相や生活難があった。
「世にしたがへば、身くるし。したがはねば、狂せるに似たり。いずれの所を占めて、いかなるわざをしてか、しばしもこの身を宿し、たまゆらも心を休むべき。(世に従えば身が苦しい。従わないとあの人は常識が無いと言われる。どこに居場所を定め、どんなことをすれば、ほんの短い間でも心を休めることができるのだろうか。)」