しし座

水底をたゆたうとき
さながら春先に雪解け水で増水した川の流れのような運気の奔流とともに12年に一度訪れる特別なリセット期間を迎えていくのが2021年上半期のしし座。
ただしそれはウォータースライダーに乗っていくような賑やかで溌溂とした体験というより、例えば、「暗がりに坐れば水の湧くおもひ(富澤赤黄男)」という句のように、漆黒の水底へと降りていっては、日常の喧噪が次第に遠くへ消えていく体験に近いかも知れません。
そうして身体を包み込むような闇が内にも外にも広がっては宇宙大の大きさとなっていく中で、やがて自分の背後から清冽な何かが噴き上げてくるような心地がしてくるはず。
それは あなたという自我の牢獄を突き破る大いなる循環への誘いであり、「自分はどこから来たのか」、また「これまで無意識に寄りかかってきた基盤は何なのか」といった問いへの答えと深いところで繋がっていくのではないでしょうか。
そうであればこそ、ちっぽけな自分を噴出孔にして、光り輝く生命の息吹のようなものが周囲に溢れ出していくにつれ、いつの間にかゆったりと安らいだ自分が還ってくるのです。
その意味で、今季のしし座は本来ならいったん慌ただしい日常から離れ、猫のような生活を送るくらいが理想的な訳ですが、実際には休んでばかりはいられないという人がほとんどだと思います。
つまり、しし座にとっての2021年は、仮に休むのが難しい状況であったとしても、 いかに日ごろの構えを解いて安らぎ、自分の心の拠り所としっかり繋がっていく時間を作れるかが問われていく時期なのだとも言えるでしょう。
2021年上半期、各月の運勢
1月「隠れた基盤に目を向ける」
24日前後にしし座の守護星である太陽が、みずがめ座で「制限と集中」の土星と重なっていきます。この配置はさながら 「前に進むばかりが人生ではない、時に歩をゆるめて立ち止まり、じっと一つの問いにとらわれて眠れぬ夜を過ごすことも必要なのだ」と告げているよう。特に、もし今あなたがどこか自分ひとり孤独な戦いを強いられているような気分になっているのなら、いったん冷静になって注意深く周囲を、そして過去の歴史を見つめ直してみてください。きっとあなたとそっくりな取り組みをしている/していた者がひとり、ふたり、いや無数に存在している/していた事実を見出すことができるはず。どんなに社会と切り離されたように見える個人にも、必ず隠れた基盤が背景にあるということを念頭に置いていくべし。
2月「覚醒のラッパ」
26日前後にしし座の守護星である太陽が、今度は「覚醒と刷新」の天王星と生産的な角度(60度)をとっていきます。先月の土星との一致のなかで、 現在の課題や何が一体問題なのかということを深く受け止められた人ほど、ここでは大きなブレイクスルーを経験していくことができるはず。身近なしがらみに左右されることなく、近視眼的な視点から離れることができれば、望ましい未来を創造していく自分なりのやり方を展開していくための重要なヒントを得たり、大きなチャンスが転がってくるといったことも十分あり得るでしょう。呼びかけられること、そしてみずからもまた呼びかけること。どちらが先になるにせよ、世の中全体に対する関わり方に大きな変化が起きやすい時期です。
3月「夢と理想のはざま」
11日前後にしし座の守護星である太陽は、うお座で「夢と理想」の海王星と重なっていきます。かつてオノ・ヨーコは「一人で見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる」と言いましたが、この時期のしし座はまさにその言葉の意味するところを生きようとしているのだと言えるでしょう。そこではどうしたら自分が活躍できるのか、といった狭い視野から脱け出して、 どうしたらお金と幸福、労働と余暇、芸術と日常を横断しつつ接続していくような、スケールの大きなビジョンを実現することができるかが問われていくはず。ただの夢想や空想で終わらせず、どんなにささやかでもきちんと形にすることを意識しよう。
4月「優しく、強く」
14日前後にはしし座の守護星である太陽が、「危機本能」の火星と「楽観性と信頼」の木星と同時に生産的な角度(60度)をとっていきます。これはこれまであなたの中で解消されずに残ってきた不安や恐れ、それらが原因となって生じた怒りや反発などを、社会における前向きで建設的な企画や仕事を通した働きかけへと昇華していきやすいタイミングと言えるでしょう。どこかレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』に出てくる「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きるに値しない」という名ゼリフを思わせる配置ですが、 強さと優しさのどちらも失うことなく、できる限り両立させてかつて受け取ったボール(贈り物)を他の誰かに投げていくこと。
5月「猥雑になっていく」
21日にふたご座に入っていくしし座の守護星・太陽は、同時に「拡大と発展」の木星と緊張感のある角度(90度)をとっていきます。これは「物事を明確になんて見なくてもいいし、分かりやすくなんて伝えなくていい」という語りかけのようでもあります。あなたの方でも、少なくとも今は 「自分が詳しくないことにもどんどん手を出していった方がいい。小さくまとまってしまったら、小利口なだけのつまらない人間になってしまうよ」といった声に素直に耳を傾けてみるといいでしょう。どうせならとことんまで猥雑さを出していきたいところです。
6月「見聞を広げる旅のごとし」
25日のやぎ座の満月は、先月にも出てきた木星がしし座の守護星である太陽と今度は調和的な角度(120度)をとって形成されていきます。この世では何かと善か悪か、成功か失敗か、と二項対立的に白黒はっきりさせなければ気が済まないという風潮が根強いですが、この配置はそうした二項対立の片棒を担ぐのではなく、 「グレーゾーンがあることを忘れてませんか」「というより、そこには豊かな色彩のグラデーションが広がっていますよ」と両側をゆっくり行き来していくようなところがあります。見方によってはどっちつかずで曖昧な状態とも言えますが、結果としてそういう状態でいた方がチャンスや支援にも恵まれやすいでしょう。
2021年上半期、しし座が心に留めておきたい芸術家
宮沢賢治(みやざわけんじ)
童話詩人、作家。生前ほとんど一般には知られず無名に近く(それゆえに)、没後に世評が急速に高まり国民的作家となった。地元の中学校の校友会雑誌の寄稿文に次のような記述がある。
「新たな時代は世界が一の意識になり生物と成る方向にある」
「新たな詩人よ/雲から光から嵐から透明なエネルギーを得て/人と地球によるべき形を暗示せよ」
「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである」