みずがめ座

やさしく猛々しい風となる
2021年上半期のみずがめ座は、さながら「メーヴェにのって飛びまわるナウシカ」のよう。あるいは、 時流=風を読む力を使って危機をしのぎ、さらに「異族」のあいだを流離していくこと。
宮崎駿の『風の谷のナウシカ』において、メーヴェという空中飛行の乗り物は非常に象徴的な位置づけにあります。それを乗りこなすためには、風のこころを肌で感じとることができなくてはならず、また風を読む力なしにはメーヴェを操ることはできないのです。
ナウシカはこのメーヴェと動力エンジンによって飛ぶガンシップとを比較して、作中でこう語っています。「なんて醜い船かしら/私はメーヴェのほうが好き/ガンシップは風を切り裂くけど/メーヴェは風にのるのだもの」。
確かにメーヴェにのって飛ぶナウシカの姿において、人間と風との調和的な関係が成立していて、それは風の谷の一族において風使いは単なる能力や職業ではなく族長たる者の務めであり、風を読む能力によって腐海の瘴気や流砂の害から人々を守ることにも繋がっているのだと言えます。
つまり、メーヴェにのることは、ナウシカにとって外の世界の残酷なリアリズムを免れたある種の「アジール(避難所)」としての風の谷の住民のいのちを養い、寄り添う行為でもあるのではないでしょうか。
また、ナウシカはときに風そのものとなって砂漠のオアシスのなかにある異国の神を祀るお堂にて、「永く待ったかいがありましたね」「ええ…風がきました」「やさしく猛々しい風が」「お行き/心のおもむくままに/いとしき風よ」などという異族の民の声に迎えられたのでした。
今季のみずがめ座もまた、そんなふうに ときに風を読み、ときに風そのものとなって、不調和な世界との調和を模索していくことがテーマとなっていきそうです。
2021年上半期、各月の運勢
1月「独立国家のつくりかた」
26日前後にはみずがめ座の守護星である天王星が、みずがめ座を運行中の太陽と緊張感のある角度(90度)をとっていきます。これは周囲に迎合しないで、自分だけの唯一無二の独立空間を作り出していく配置。単純に浮いているとも言えるのですが、 どうせ浮いてるなら、とことんまで浮き上がって独立した遊星になってやろうというくらいの突き抜け感は欲しいところ。なお『独立国家のつくりかた』については、坂口恭平さんの同名の著書を参考にするか(特に経済についての項)、彼の現在の活動をフォローしてみてください。
2月「暴流のさなかで」
18日に前後して、みずがめ座の守護星である天王星に、「課題と点検」の土星が緊張感のある角度(90度)をとっていきます。これまでの時代だったら許されたかも知れないが、もう許されないし、許したくないということが自分の中で明確になってきてくるでしょう。特に、マイノリティにしろ、草の根運動にしろ、差別されてきた側や抑圧されてきた側の意見や主張が受け入れられていく流れは、ここから堰を切ったダムのごとくさらに強まっていくはず。みずがめ座のあなたは、 その流れの中で問題の本質とは何か、変えるべきものと変えずに受け継いでいくべきものとの区別を冷静に見定めていくことでしょう。
3月「橋としての物語」
5日前後にはみずがめ座で「知性」の水星と「統合」の木星が重なっていきます。この組み合わせは、そこに一つの本棚や図書館が出来上がっていくようなものと言えます。つまり、 言葉が言葉を呼び、知識が知識と呼応するようにして、バラバラだった情報がひとつの星座となり、やがて全天を埋め尽くすまでにいたるなかで、そこに壮大な神話体系が生まれていくように、あなたの世界がより豊かに広がっていきやすいでしょう。ここでのテーマは「越境」であり、すでに社会のそこかしこに走っている分断をいかに克服していけるか。ここで広がった物語が、あなたなりに世界へ架けていく橋となっていくのです。
4月「真の勝利・成功とは何か?」
16日前後にはみずがめ座の木星と、「行動力」の火星、「創造」の太陽と極めて生産的な配置(小三角)を取っていきます。これはみずがめ座が何となくとらえていた世界像や、ぼんやりと描いていた希望の繋げ方が、実際の行動と結びついていくなかで、是が非でも実現させたい現実的な目標となって目前に展開されていきやすい配置と言えます。この時期は新たな可能性やビジョンに憑りつかれたようになって、その実現に向かって猛進するようなところが出てくるかも知れません。しかしその過程で 「真の勝利や成功とは何か?」という問いに導かれていく中で、自然と冷静さを取り戻していけるはず。
5月「賭けとしての贈与」
1日前後にみずがめ座の守護星である天王星に、「行動原理としての贈与」の太陽が重なっていきます。例えば仮に、この2020年代が地球環境が完全に破壊されつくされる未来から救うことのできる最後の時点であり、ターニングポイントであるとして。環境問題やデジタルによる支配が進行している現在の社会状況下で、目の前の欲望を満たすことばかりを追求する人類に対し、あなたは何をどうアクションしていくべきなのか。バタイユは「贈与とは賭けである」と言いましたが、 今あなたが行い得る最大の賭けとは何かということを考えてみるといいでしょう。
6月「“普通”の壁を崩すには」
15日前後にはみずがめ座の守護星の天王星と、「“普通”の壁」を表わす土星が今年2度目の緊張感ある角度(90度)をとっていきます。今回は土星が逆行しており、この五カ月近くの逆行期間、土星は太陽と正反対の位置を巡っていきます。これは現実(土星)と認識(太陽)が向かい合う中で、その重さや責任に対してまっすぐに受け入れることができないけれど、それを突きつけられている期間でもある訳で、みずがめ座としてはそういう 周囲や社会に漂う「自分は関係ない」「自分ひとりが何をしても無駄だ」といった空気のようなものに対し、どうしたら例えかすかでも風穴をあけていけるかが問われていくはず。かつて私たちと同じごく平凡な普通の人びとこそがホロコーストの加害者になっていったという現実をよくよく胸に刻んでおくべし。
2021年上半期、みずがめ座が心に留めておきたい芸術家
出口王仁三郎(でぐちおにさぶろう)
宗教家。新宗教「大本」の二大教祖の一人。肩書きは「教主輔」。もう一人の教祖(「開祖」)は、出口なお。三千世界の立て替え・立て直しを唱導し、大正十年と昭和十年の二度にわたって起きた宗教弾圧事件(大本弾圧事件)の主人公として知られるが、一方では陶芸、書、絵、短歌などに取り組む破格の芸術家としての一面も持っており、僧侶であり小説家だった今 東光(こんとうこう)はそんな彼のことを「大妖怪」と呼んだ。
「国と国のいくさはすれど地の上の人はのこらず同胞なるも」
「闇黒社会の手榴弾となって随所に爆発しようとする俺」
「すがすがしい気分だ人目をさけて放屁した夕べの川辺」
「あまり小さい事は考へぬがよいだろう広大無辺の宇宙の中で」
「ころころと背すぢつたひて首の辺に爆発したり風呂の湯の屁は」