やぎ座
山頂とエロス
2019年上半期のやぎ座の運気は、登山に例えれば7~8合目あたり。
何かしらこれまでにない手応えは感じつつも、頂上まではやや遠く、周りもよく見えず、体力も酸素濃度も低下して、いよいよ苦しくなってきていたのではないでしょうか。
その点、 2019年下半期は、頂上が視界に入ってくる直前の一番苦しいところを含んだ「最後の登り」を駆け抜けていくことになります。頂上というのは、扉が開くようにいきなり開けてくるということはまずなくて、だんだん近づき、だんだん見えてくるもの。
その過程では、自分ひとりでできる「努力の限界」がおのずと見えてきたり、逆に限界を越えたあと一歩を乗り切るために、周囲や大切な誰かに手を伸ばすことで、「運に運ばれていく」感覚を抱いたり、といったことも起きてくるでしょう。
特に、 この時期は創作や手作業、何らかの創造的な試みに関わっていく中で、みずからのDNAを改めて自覚させられたり、一度自分が生まれ変わってしまったような経験をしていくことになるかもしれません。
それは、あなたの中でアーカイブ化されてきた情報と情報の隙間から、説明や分類を拒む「なにか」に触れ、そこで深い「エロス(愛)」を感じていくことと表裏の関係にあるのではないかと思います。
エロスとは極限の感情である。沸騰する熱情と、冷却する自意識とが激しく相克しあうような今の時期にこそ、最も深くあなたの魂を揺り動かしていくはず。
2019年下半期、各月の運勢
7月「心の扉を叩く音」
3日(水)にかに座で日食が起き、4日(木)に金星がかに座へ。かに座はやぎ座にとって「パートナーシップ」を意味する7番目の位置関係にあり、ここで、 誰かから心の扉を開け放たれていくような動きが起こってきそうです。それは特別な出会いによってなされるかもしれませんし、すでに結ばれていた関係性が刷新されることでそうなるのかもしれません。いずれにせよ、 あなたがその相手から不意に名前を呼ばれたとき「はっ!」とこみあげてくるものがあるはず。その後はもう、自分の肌感を信じて直接確かめていくといいでしょう。
8月「欲望がせめぎあうなかで」
18日(日)まで、金星と火星がそろってしし座に同座している8月は、旅先で訪れた常夏の街の夜風のようにあなたを大らかに包み込む一方で、なまめかしい欲望の気配を濃厚に漂わせていくでしょう。そこでは、あなたの要求と相手の要求がぶつかりあっては、刺激的な和合と劇的な決裂とのあいだで、際どいせめぎあいを演じていくはず。ただそこで普通に勝ちに行こうとするようでは面白くない。 よく「負けるが勝ち」とは言いますが、本当にそんな心境に自分が至れるものかどうかを見ていくといいと思います。
9月「色をつかう」
コミュニケーションの水星と、愛欲と感性を司る金星が14日(土)に同時にてんびん座入りしていくと、 これまでどこか野放しになってやりたい放題やっていたのが、一転してピーンと社会的立場を伴なった緊張感のある流れに。てんびん座はやぎ座から数えて10番目の位置関係にあり、これは肩書きや建て前、仕事上の方向性を意味しますから、ここしばらく、どちらかと言うとプライベートに振り分けられていたエロスが、仕事の方へ出口を切り替えていくのでしょう。 自然とチャンスや色好い話に恵まれやすくなっていくはずです。
10月「骨身に沁みる自己矛盾」
3日(木)に冥王星が順行に戻り、水星がさそり座入り、さらに9日(水)に金星もさそり座入りしていく10月は、 いよいよ欲望というものが骨身に沁みてくるようで、プライベートだの、仕事上の建て前だのという区別もなくなってくる 。
11月「パッと先が開けてくる」
月が変わってすぐに水星はさそり座で逆行を始め、それが21日(木)頃まで続いていき、その間は少しゆっくりと時間が過ぎていくように感じられるはず。そこで、さすがにおのれの中の自尊心や劣等感をあぶり出すだけでは飽き足らなくなって、もう不可避的にやるしかない自分の仕事にとりかかっていこうとするでしょう。 水星が逆行している時というのは、案外行き詰まっていくほどに自分というものが見えてきて、ぱっと視界の先が開けてきたりするものですが、この時のあなたにもきっとそういうことが起きてくるでしょう。
12月「パノラマ体験と救われた実感」
3日(火)に、拡大と発展の木星が、あなた自身の星座であるやぎ座へ移ってきます。 苦しい登りもここでやっと終わり、記憶の中で断片的になっていた道中の光景も、振り返ればひと繋がりのパノラマとして目の前に浮かび上がってきます。その際、結局あなたが一番苦しかった時に救いになってくれたのが誰の存在だったのかもおのずと分かってくるでしょう。ここ数年、おのれの力や才能を頼みに、基本的には孤独な道のりをここまで歩んできましたが、これからは軸足が自分から他者へと次第に移っていくでしょう。
2019年下半期、やぎ座におすすめの映画
『マイ・フレンド・フォーエバー』(1995、アメリカ)
言わずと知れた名作なので、ここでは本筋の説明は省きますが、この映画を推しどころは「持つべきものは友」ということを言葉以上の力で訴えてくるところでしょうか。物語を書く才能を持ちながら、両親から認められず愛されないことにヤケになったコーディに対して、親友のクリスはこう言うのです。「 子どもってのは大事な物を簡単に捨てたがる。だから、誰かが見守っててやんなきゃいけないんだ。お前の親がいらないなら、おれが守ってやるよ」。もう、これだけで十分でしょう。