アートに馴染みのない人でも足の運びやすい現代アート美術館・森美術館。
2019年6月20日(木)〜2019年10月27日(日)の期間限定で開催されている「塩田千春展:魂がふるえる」は、ダイナミックなインスタレーションが視覚から脳に訴えかけてくる、いま注目のアート展になっています。
足を運んだ人を後悔させない展示品の数々から、いくつかをピックアップしてご紹介します♩
過去最大規模の個展「塩田千春展:魂がふるえる」
六本木ヒルズ森タワー53階の森美術館で開催されている「塩田千春展:魂がふるえる」は、ベルリン在住の現代美術家・塩田千春さんの過去最大規模の個展となっています。
副題の「魂がふるえる」には、言葉ならない感情によって震えている心の動きを伝えたいという作家の思いが込められています。
25年にわたる活動を網羅的に体験できるこの機会を通し、生きることの意味を改めて考えるきっかけを得られるかもしれません。
赤と黒の糸を張り巡らせたインスタレーション
立体作品やパフォーマンス映像、写真、ドローイングなど複数の展示品がある中で、見た人の心をもっとも惹きつけるのは、赤や黒の糸を空間全体に張り巡らせたダイナミックなインスタレーションです。
入場してすぐに見られる『不確かな旅』というタイトルのインスタレーションは、エリア全体に張り巡らされた赤い糸と、その糸と繋がっている船のような形をしている鉄枠とが、観ている人を現実と非現実の境目に連れていく引力を持っている作品。
糸はもつれ、絡まり、切れ、解ける。
それは、まるで人間関係を表すように、私の心をいつも映し出す。
“赤い糸”と聞くと、人と人との繋がりがイメージさせられますね。
塩田さんが糸と糸との関係をどのように捉えているのか、壁に印刷された文章にも注目して観てみるのがおすすめです♩
赤い糸があれば“黒い糸”もある。
『静けさの中で』というタイトルがつけられたこちらのインスタレーションでは、焼けたピアノや椅子などが黒い糸によって繋げられ、ひとつの空間が完成しています。
「生」や「動」をイメージさせる赤い糸のインスタレーションとはまた雰囲気が違い、黒い糸は「死」や「静」をイメージさせ、自然と息を潜めてしまうような強い存在感を放っています。
赤い糸と黒い糸のインスタレーションを何度か交互に観てみる、という楽しみ方もおすすめですよ!
1本では頼りない糸も、繋がったり絡まったりすれば力強いものとなる。
心と身体がバラバラになっていく、どうにもならない感情を止められなくて、自分の身体をバラバラに並べて、心の中で会話する。
赤い糸と身体を繋いで、やっぱりこういうことだったのか…と、何かが分かる。この感情を表現すること、形にすることは、いつもこういうふうに同時に魂が壊れることなんだ。
糸と人、糸と物など、糸が紡ぐ関係性が、想像しているより広範囲であることにも気付かされます。
繊細だけどパワーのある展示品の数々と触れ合うと、こちらの魂もふるえるような体験ができるかもしれません。
森美術館エントラスに飾られた『どこへ向かって』
また森美術館のエントラスに天井から吊るす形で設置されているインスタレーション『どこへ向かって』にも注目です。
白い船が展示室に向かっているような形で吊るされ、私たちはその下を行き来します。
魂はどこからきて、一体どこに向かうのか。この展覧会でその答えは見つからずとも、ヒントを見つけることはできるかもしれません。
塩田千春展:魂がふるえる
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/shiotachiharu/
※展示室によっては写真不可の場合があるのでご注意ください