タイトルや歌詞に並ぶセンセーショナルな言葉の羅列、ライブでの圧倒的存在感で、幅広い音楽シーンから注目を集めている大森靖子さん。音楽表現に関する話はもちろんのこと、プライベートで“どんな考えをもって、どんな生活をしているのか”、気になっている方も多いはず。
シンガーソングライターであり、妻であり、母である大森さん。少女のようなみずみずしい感性と女としての毒や狡猾さを併せ持ち、女性として、人間としての「在り方」を常に追い求める姿は進化し続けています。
そんな大森さんの核の部分に少しでも迫るべく、プライベートにも切り込んだインタビューを敢行。でもやっぱりまだまだ足りなくて…、もっと大森さんのことが知りたくなっちゃいました♡
--3月15日にNEW ALBUMリリースということで、おめでとうございます。
大森-ありがとうございます。
--今回のアルバムのコンセプトや、誕生の経緯などをお聞かせいただけますか?
大森-今回のアルバムのタイトルが「kitixxxgaia」ということで、コンセプトは大きく言ったら「神」。“混沌と虚無からすべてを作り出した神”が、ガイアなんです。
前回のアルバム制作が出産の時で、1か月くらい家にこもって作っていたものが多かったんです。そうすると自分の中から作らなきゃいけないじゃないですか? でも、人の中にいる自分のほうが、本当の自分だったりするんですよね。だから今回は自分からはがれていった自分をそこで解釈してもらったり、“共通項の自分”を歌にしてもらったりして作りました。
例えば、小室哲哉さんに作曲してもらった「POSITIVE STRESS(ポジティブ・ストレス)」っていう曲があるんですけど。
--タイトルだけでもすごいパラドックスですよね。
大森-はい。言葉を並べる時に矛盾を作って、その意味を強固にするのが好きなんです。「POSITIVE STRESS」は小室さんの曲に対していろんな言葉を投げかけているんですけど、“その言葉はこの曲は受け付けません”って言葉がすごく多くて。で、その曲に選ばれた、自分の中にあった言葉で歌詞を作るのがすごい楽しいし、曲のキャラクターを生かすことによって、焦点が分かりやすくなる。
自分というぼやっとしたものではなくて、自分の中の、「ここ」の、「こういう部分」を曲にしたっていうのが分かりやすくなったっていうのがあるので、このアルバムはパキッとした曲が多いなっていう印象です。
わたしはインディーズの時からみんなで「大森靖子」っていうものを作ってきたっていう認識があるんです。みんながこんなふうに言ってるからこっちのほうが面白いんだーって、それを取り入れようとしたり。
わたしがインディーズだった時代は、アイドルがライブハウスで普通にバンドと対バンするようになっていった時だったので、その時に、こういうやり方もいいんだ、自分がやってもいいんだって思うことも多かったので、みんなで作り上げてきた作品っていう印象があるんですよ。
それを今回、再構築していくっていう作業だったので、コンセプトは自分のもともとのファンの方で、「この人はいつもビビっとくることを言ってるから、この人と一緒に考えよう」って思った方と決めました。
--ファンの方だったんですね!?
大森-そうです、わたしのイラストとか、いっぱいネットにあげてくれていて。それで声をかけて一緒にコンセプトを考えました。
興味を惹かれる曲のタイトルは意外なところから!
--リード曲の、「ドグマ・マグマ」という曲について教えてください。
大森-例えば集団の単位で考えるから戦争が起きるけど、全員が“性別も人種も違う個々”っていうのが本来じゃないですか。なので、そういう個々でぶつかり合うことを忘れずにやっていけばいいんじゃないか、っていう提案を「ドグマ・マグマ」ではしています。
--「ドグラ・マグラ」とも関係がありそうですが、タイトル決めはいつもどのようにされることが多いですか?
大森-関係ありますね。「ドグマ」っていう映画からもとっていますし、ドグマっていうAVメーカーさんがあって、そこからもとったりとかしてます。「マジックミラー」とか、AV作品のタイトル名からもとってますね。「ミッドナイト清純異性交遊」とか、昔の曲でもとっています。
--文学にも親しんでいらっしゃるんですか?
大森-親しいフリをしてるだけで、全然(笑)。
--そうなんですね! SNSなどのコメントを拝見した時に、独自の文体を構築されているなあという印象があったもので……。
大森-よく言われますが、まったく読んでない(笑)。高校生くらいから1日3000字は書こうっていうのでずっとブログを書いていたので、それでかなあと思います。本は、全部理解できないと前に進めなくて、10ページくらいで諦めちゃうから読めないんです。
--漫画はお好きなんですよね。
大森-大好きです。でも読むのは遅いです。一応美大生だったから、描くのにどれくらいの時間がかかってるかって、なんとなく分かるじゃないですか。そのぶん、端の線までちゃんと見ないとっていう気持ちになっちゃって、読むのがめちゃめちゃ遅くなるんです。
みんなで作ってきた「大森靖子」のキーワードは「共有すること」
--今までの作品を拝見していると、衣装やヴィジュアルの世界観がすごく作りこまれたものだったり、逆にごく日常的なものだったりと、様々だと思ったんです。
大森-そうですね、曲によって合わせています。
--なんかもう違う人みたいでした。
大森-あ、ほんとですか? ありがとうございます。あんまり考えたことなかったな。
--毎回どのあたりからイメージをアプローチしていくんですか?
大森-自分の中で漠然とイメージができてきたら、まずは作家さんを指名します。参考画像みたいなのを拾ってきて、この衣装を作ってくれる人は今回この人がいいです、とか。そこから一緒に具体的なイメージを作っていく感じです。今回はアルバムタイトルの候補が30個くらいあったので、それを言ったり、こういうことが言いたいというキーワード的なものを共有したりもしてます。
--ちなみにどんなキーワードがあったんですか?
大森-「ディスミューズ」とか、「ピンクの教会」とか。ピンクの教会は、実際ベトナムにすごく可愛い所があるので、その写真を送ったりもしました。
--ぱっと見たときに衣装はウェディングドレスっぽいような印象を受けたのですが、そういうわけではない?
大森-ではないですね。マリア様みたいな感じです。これ、パーカーなんですよ。
衣装を作ってくれた方が、わたしはパーカーのイメージがあるからって。中に、神(道重さゆみさんのお写真)がいるんですよ。これが可愛い。一緒に作っていく時に、周りの方とはこだわりや好きなものをかなり共有するようにしているんです。そのほうがやっぱり楽しいので。
子供のおかげで生活のリズムが作れている
--今、Twitterはオフィシャルと子育て用のものと、2つやってらっしゃると思うのですが、お子さんを出産されてから、生活は変わりましたか?
大森-変わりましたね。朝7時8時になると殴り起こされるので(笑)、むしろ子供が生活のリズムを作ってくれているような感じです。
ミュージシャンの人って昼頃起きて、ってイメージじゃないですか。でも朝に起こされて、ご飯を食べさせて、お風呂入れてってやってると時間が決まっていくし、わたしけっこうな低血圧で、朝なかなか起きれなかったので、逆にそれがありがたいなっていう。
でも最近、殴られるようになって、痛いじゃないですか。それで「痛いわー」っていつも言ってたら、1番最初に喋ったのが「いたいわー」になっちゃったんですよ。「はい」とか「ばあ」とか「ママ」とかは言ってたんですけど、初めての日本語っぽい日本語が「いたいわー」って。なにかにつけて不快だったら「いたいわー、いたいわー」ってずっと言ってるんです(笑)。
あと、わたし耳が悪いので「え?」ってよく聞き返すんですけど、それも「えぇ!?」って真似するようになりました。だから、態度を改めないとなーって(笑)。
それぞれが「子育てしている」認識になれば働きやすい環境ができるはず
--働きながら子育てをしている女性って増えてきていると思うんですが、なかなか難しいのが現状ですよね。その中でアドバイスや、こう考えたらいいよっていうのはありますか?
大森-夫もわたしも、2人ともが働いて2人ともで子育てしてるっていう認識なので、わたしは楽なほうだと思うんですよ。協力してるとか、手伝ってあげるっていう認識じゃなくて、それぞれ自分が子育てしてるっていう、完全に同じくらいの認識でいられてるから。
--そういった感覚は最初からあったんですか?
大森-ありました。多分、ちょうど同じくらい働いてるからですかね?
--やっぱり相手選びが大事ということですね……。
大森-そうかな?(笑)男性も女性もそういう認識になれれば、すごく働きやすい環境ができると思います。なんか、イクメンとかそういう言葉も全部潰してもらって。だってイクママとか言わないじゃないですか? 親が子どもを育てるのは当たり前だから。っていうところから調教するといいんじゃないですかね(笑)。
大森靖子さんからのメッセージ
音楽によって人を浮かばせたいというか、いい方向に持っていきたいっていうのは、当然思っています。でもすごい盛り上がる音楽を聞いて頑張ってテンションを上げたところで、またすぐ落ち込んじゃうことってあるじゃないですか。なので、そこを本質的な意味でちょっとだけ浮かばせてあげるというか、そういう音楽ができればいいなとか、そういう言葉の強さは欲しいなって思っています。
あと、もっと「個」になればいいのにって思ってます。集団になったらもうダメですね。でもそれでも、個々でぶつかってしまった時はどうすればいいんだろうっていう回答も、この最後の「アナログシンコペーション」という曲で示したつもりでいて、けっこう歌詞で伝えたいことが書けたかなって思っているので、ぜひ、聴いてほしいなって思います。
NEW ALBUM「kitixxxgaia」
New Album「kitixxxgaia」2017.3.15 Release!
<CDアルバム>
kitixxxgaia 【マグマ盤】
AVCD-93627 ¥3,000(税抜)
(CD)
01 ドグマ・マグマ feat.fox capture plan
02 非国民的ヒーロー feat.の子(神聖かまってちゃん)
03 IDOL SONG
04 JI・MO・TOの顔かわいいトモダチ
05 勹″ッと<るSUMMER feat.あの(ゆるめるモ!)
06 地球最後のふたり feat.DAOKO
07 ピンクメトセラ
08 POSITIVE STRESS
09 夢幻クライマックス かもめ教室編
10 オリオン座
11 コミュニケイション・バリア
12 君に届くな kitixxxgaia ver.
13 アナログシンコペーション
<CD+LIVEBlu-ray>
kitixxxgaia【ドグマ盤】
AVCD-93626/B ¥5,800(税抜)
(CD)
【マグマ盤】+新録弾き語り曲「君と映画」
(Blue-ray)
全国ツアー「TOKYO BLACK HOLE TOUR」TOKYO●ZEPP TOKYOライブ映像
<CD+LIVECD+DVD>
kitixxxgaia【ガイア盤】
AVCD-93624~5/B ¥4,500(税抜)
(CD)
【マグマ盤】+新録弾き語り「M」
(LIVE CD)
01 LIVE SHIN T●KY● BLACK H●LE@ZEPP TOKYO 2016.11.18 より
(DVD収録内容)
01 ピンクメトセトラ(Music Video)
02 勹″ッと<るSUMMER feat.あの(ゆるめるモ!) (Music Video)
03 ウェディング・ベル(Music Video)
04 POSITIVE STRESS(Music Video完全版)
05 非国民的ヒーロー(Music Video ヒーロー版)
06 オリオン座(Music Video)
07 YABATAN伝説(Music Video/DVD Ver.)
08 ドグマ・マグマ(Music Video)
<CD+DVD>
kitixxxgaia【カルマ盤】(ファンクラブ限定盤)
AVC1-93628/B ¥5,000(税抜)
(CD)
【マグマ盤】+新曲弾き語り「ラーメンの話」
(DVD)
ハイパーカウントダウン2016-2017@新宿LOFT
01 LIVE@静岡2017.1.29
02 実験室@新宿2017.1.31
大森靖子 PROFILE
新少女世代言葉の魔術師。超歌手。大学時代からシンガーソングライターとして音楽活動を始め、しばしば「激情派」とも呼ばれた、弾切れも気にせず畳み掛けるように言葉を撃ちまくるジェットコースターのような弾き語りや、ときにギターすら持たないアカペラによる、夜のパレードのような空間制圧型ライブが口コミで広がる。インディーズながら渋谷CLUB QUATTROでのソロワンマンライブを成功させるなど、怒涛の勢いでその存在感を増していった。2015年の第1子出産後も精力的に活動を行い、前回のアルバム発売時は必然的に自宅で作業が主となったが、今回は外部からのたくさんのインプットを得て、満を持してのアルバム『kitixxxgaia』発売となる。道重さゆみさん(元モーニング娘。)の熱狂的なファンである。アイドルを含む多方面のアーティストとのコラボ作品も多数。フジロック、ロックインジャパン フェスに出演。自らを「音楽の中ならどこへだって行ける通行切符を唯一持つ、無双モードのただのハロヲタ」と称す。今後の活動としては、6月より仙台、福岡、札幌、大阪、名古屋、
PHOTO:MIWAKATOH/文章:馬塲言葉