2015年の11月に発売されたiPad ProとApple Pencilは、“デジタルなのに紙の質感が再現できていてすごい”とイラストを描く人たちに愛用されていますね。
そういったクチコミはよく見るけど、本当に仕事のシーンで使えるのか?
実際にiPad ProとApple Pencilを使ってイラストの仕事をしているという、京都出身のイラストレーター、Chocomoo(チョコムー)さんにお話を聞いてきました!
大人気イラストレーターとして働くことになった経緯や、仕事に対する姿勢、iPad ProとApple Pencilを使った制作の裏側など、色々と話していただきました♪
個展開催「絵を仕事にできるんだ」
--本日はよろしくお願いします!早速ですが、Chocomooさんがイラストレーターとして活躍することになった経緯を教えてください!
Chocomoo-わたし、絵を描く学校とかに通ったことがないんですよ。全部、独学で。それで最初はイラストレーターとして働く、ということも全く考えたことがなくて。そもそも絵を描いて生きていくという仕事があることも知りませんでした。
元々はトリマーになりたいっていう夢があって、その夢を叶えて実際にトリマーとして働いていたんですけど、働いていたら猫アレルギーということが分かって。それで「やめたほうがいい」ってドクターストップをかけられて、トリマーを辞めました。
それで何しようかなと思った時に、洋服も大好きだったからアパレルの仕事に就いたんですね。そこからNYに遊びに行って、公園で友だちと遊びで絵を描いていたら、声を掛けられて。それがギャラリーのオーナーみたいな人で、「個展をやらないか」って。
そのまま個展をひらいてみたら、描いた絵が売れたんですよ! 「あ、絵って売れるんだ。仕事に出来るんだ」と思って、そこから色々とお仕事をさせてもらうようになりました。
歌手のAIさんのツアーグッズを制作
--独学というのがすごいですね! 数々のお仕事の中で歌手のAIさんともコラボされていましたよね。
Chocomoo-AIちゃんとお仕事したきっかけは、とあるファッションブランドとのコラボTシャツの展示でした。その時、AIちゃんも偶然海外にいて、私のそのTシャツの展示を見に来てくれて。そこですぐに「私と仕事がしたい!」と思ってくれたらしくて、コンタクトをとってすぐ会いました。
その日のうちに色々と打ち合わせをして、コラボでツアーグッズのイラストを描かせてもらうことになったんです。
--それは奇跡というか、すごい偶然ですね。海外によく行かれているイメージがあるんですが、英語は話せるんですか?
Chocomoo-あんまり話せないです。でも、手の動きとかボディランゲージを使って。
個展の時にお客さんと話す機会もあったんですけど、そこで「すごいな」と思ったのが、言葉が喋れなくても、絵でコミニュケーションが取れるんですよ! 少ない単語と絵があれば、喋れなくても分かってくれるのがすごかった。
2016年の目標は「チョコと仕事をしたい」だった
--昨年の数々のお仕事の中で、森永製菓の「DARS」のパッケージイラストともコラボしていましたね。すごく可愛かったです。
Chocomoo-ありがとうございます。わたし、名前がチョコムーっていうんですけど、チョコが好きだからこの名前なんですよ。海外に“チョコムー”って名前の飲み物があってそれをずっと飲んでいたら友だちが呼び出して、Chocomooになりました(笑)。
それで2016年は「チョコレートと仕事がしたいな〜」って思っていたら、ある日突然、Twitterで森永さんから「Chocomooさん大好きです!」っていうリプライがとんできて、でもみんなに送ってるんだろうなと思って確認したら私にしか送ってなくて!
私も「大好きです!」って返信をしたら森永さんからTwitterでDMをもらって、お仕事させてもらうことになりました。
--TwitterのDMですか⁉︎ それは驚きです! 森永製菓の「DARS」といえば伝統あるパッケージデザインですが、そこに自分のイラストを載せるということに不安や苦労したことはありましたか?
Chocomoo-そうですね。その基本のパッケージイラストのデータを頂いて自分のイラストを載せる形で、もちろん不安とかもありましたけど、楽しんでイラストを描かせて頂けました!
iPad ProとApple Pencilで「人生が変わった」
--その「DARS」のパッケージに載せたイラストはiPad ProとApple Pencilを使って描かれたと聞いているのですが、いつから使われているんですか?
Chocomoo-iPad Proは2016年から使っています。イラストを描くのにすごくいいって聞いて。
--実際に使ってみてどうでしたか?
Chocomoo-iPad Proを使う前は紙に描いたイラストをスキャンしてデータしていました。で、データにしたものって線がガタガタになってしまったりするから、そこからガタガタになっている線を綺麗に修正したりして、すごく時間がかかっていたんですよ!
でもiPad ProとApple Pencilを使ってからその作業時間が短縮されて、睡眠時間もちゃんと取れるようになりました(笑)
--iPad ProとApple Pencilのどんなところが使いやすいですか?
Chocomoo-わたし、iPad Proの12.9インチを使っているんですけど、この大きさがまず紙で描いていた時に近くて使いやすいんですね。それでApple Pencilなんですけど、手首が画面についたままでも描けるし、描いている時の質感もめっちゃ紙に近い!
イラストをデジタルのもので描くことに拒否感があったんですけど、iPad ProとApple Pencilは全くそんなことなかったです。
--そのiPad ProとApple Pencilを使って描いたデザインは何かアプリを使ってクライアント先に送っているんですか?
Chocomoo-基本的にはメールですね。iMessageで送ってます。わたし、スタンプも出していてそれも使いたいので(笑)。
あと、iPad Proだと送ったデータで修正する部分にすぐに対応できるところも助かってます。本当に誇張なしでiPad ProとApple Pencilに出会って、人生まじで変わった!(笑)
インスピレーションは旅、音楽、散歩から得る
--iPad ProとApple Pencilとの出会いで仕事の生産性があがったということですが、昨年は本当に色々なコラボをされていましたね。コラボというと自分の作風が消えるなどの不安はありますか?
Chocomoo-そうですね、たくさんコラボさせてもらいましたね。最初は自分の作風が消えちゃうとか思ったこともあったんですけど、今はそんなこともないですね。
--またコラボだとお互いの納得点があって仕事をすることになると思うんですが、いつぐらいからその納得点のようなものを見つけられるようになりましたか?
Chocomoo-今まではわたしの名前が全く出ないコラボもたくさんありました。でも最近はお互いにリスペクトしあって、楽しく仕事をさせて頂いているので、そんなこともなくなりましたね。
たまに「色のついた絵を描いてほしい」って言われることもあるんですよ。でもわたしモノクロの絵しか描けないんです。なので「わたしはモノクロの絵しか描くことが出来ないので、それでもよければ」って感じで。
--交渉しているんですね。下書きはしないでいっぱつ描きをされているということですが、どんなところからインスピレーションを得ているんですか?
Chocomoo-美術館にはよく行きますね。海外によく行くんですけど、海外のアート展を見に行ったりしています。後は旅をしたり、音楽を聴いたり、よく歩いたりしています。海外だとロンドンが特に刺激的ですね。あと暇さえあれば韓国に行ってます(笑)。
最近も韓国のパックのパッケージデザインをさせてもらったりして、韓国や香港はすごく反響もいいんですよ!
あと人前で喋ったりするのが得意じゃなかったんで、最初はライブペイントも嫌だったんですけど、最近は見ている人の生の声が聞けるのですごく刺激的ですね。
仕事は遊びに近い感覚。2017年は映像をやりたい!
--お話を聞いているとすごく楽しそうな感じがするのですが、仕事をする上で大切にしていることはありますか?
Chocomoo-イラストのお仕事はわたしの中で「仕事」っていうより、遊びって感覚に近いんですよね。それに基本的にすごく能天気なんですよ。全く悩まない(笑)。描けなかったら寝てしまえ! って感じで。
確かにイラストって100個描いたらその全てが世にでるわけじゃないし、作業量に対して結果が出ない時は落ち込むこともありますけど……。
大切にしていることは楽しむこと、あと継続してやること。自分なりに勉強すること。コラボしたい人がいる時は、その人がいるレベルまで自分も近づくことですね。
コラボする相手や物によって、色々ミックスしているんですよ。元々は男性向けの絵を描いていたので、その絵柄を変えて今に至ってます。
--2016年の目標は「チョコと仕事がしたい」でしたが、2017年の目標はありますか?
Chocomoo-2016年の個展で、iPadを壁に3つ並べてキャラクターがその中を移動するインスタレーションをやったんですけど、2017年は映像がやりたいです! キャラクターが動く作品に挑戦したい。
--貴重なお話ありがとうございました!
Chocomoo PROFILE
Chocomoo(チョコムー)
京都出身のイラストレーター。モノトーンの作品が特徴的。歌手のAIや三代目 J Soul Brothers NAOTOのファッションブランド「SEVEN」とコラボグッズを出したり、Dr.MartensやReebok、森永製菓「DARS」ともコラボするなど、日本をはじめ海外で人気のファッションブランドや企業、アーティストへのART提供をしている。また国内外のART Showにも参加するなど、幅広いシーンで活躍中の、今注目のイラストレーター。
Photos by YORIKO INOUE